PL学園のプレ・ラストサマーが始まった。PL学園が登美丘に7回コールド勝ちし初戦を突破。2代目校長監督で4月から指揮を執る草野裕樹監督(64)は来春以降の新入部員募集について「状況は変わっていない」と明かした。現状で1年生がおらずこのままなら2年生12人が最後の夏を迎える来年が高校球界で一時代を築いた同校にとっても最後の夏になる。

 夏の太陽が戻った青空に、PL学園の2本のアーチが舞った。1-0の2回は中田一真捕手(3年)が2ラン。3-1の4回は辻涼介外野手(同)が3ランをかけた。

 公式戦1号の中田は「一番の収穫は、円城寺が夏の大会で投げられるメドが立ったこと。連戦に備えて投手は多い方がいいので」と捕手らしく、2番手の円城寺怜唯(れい=3年)の2回1失点投球を喜んだ。辻は「夏の初戦で少し硬さはありましたが、上からしっかりたたけました」と高校12号で勝利を決定づけた。いつもの年なら、華々しい門出になる試合だった。

 試合後、2代目校長監督は「状況は何も変わっていません」と重い口を開いた。野球部の部員募集再開の指示が教団から出ない。部の存続を切望する関係者の間では、17年以降の野球部再開のうわさが取りざたされるが、学園の理事会の検討議題に上がったことはいまだにない。教団からは来春以降の部員募集停止の通達も出ておらず、草野監督は「今後指示が出るかもしれないし、未定です」と補足。だが再開の指示が出ない限り、現在の2年生12人が部を卒業する来夏がPL学園の最後の夏になる。

 秋の新チームを取り巻く状況は厳しい。現3年生21人が部を卒業。2年生12人では紅白戦など実戦形式の練習ができず打撃練習の際に守る選手にも事欠く状況。部員12人では公式戦の記録員選任にも頭を悩ませる。施設面でも大阪・富田林市のPL球場のスコアボード、室内練習場は老朽化で近く取り壊される。新室内を造る計画はあるものの施工予定ははっきりしない。

 出口が見えない中の夏初戦。昨秋からサインを出す奥野泰成内野手(同)が野球経験のない草野監督を補佐し、投手交代も決めた。謝名堂陸主将(同)は「勝たないと次に進めない。自分たちの野球をしっかりやりたい」と力を込めた。チームの奮闘こそが苦境を切り開く力と信じる。それが6年ぶりの夏の甲子園への力になる。【堀まどか】