これが「兵庫王者」の底力だ。神戸国際大付が延長11回の末、神港学園との激戦を制して5回戦に進出した。昨夏1年生として唯一甲子園を経験した背番号「14」の町田優太外野手(2年)が延長11回に決勝打を放って粘り勝ち。これで昨夏の兵庫大会初戦から続く県内連勝を24に伸ばし、悲願の兵庫連覇へ、また1歩前進した。

 県内公式戦無敗の看板はダテではなかった。接戦にピリオドを打ったのは身長163センチ、背番号「14」の小さな2年生。延長11回1死二塁。神戸国際大付の町田が打席に入った。7回代打で出場しながらチャンスで凡退して迎えた3打席目。「なんとしても打ちたかった」。快音とともに左中間で打球が弾む。チームに勝利をもたらす決勝適時二塁打。二塁ベース上で右手を高々と挙げた。昨夏の兵庫大会初戦から続く県内連勝記録を「24」に伸ばした。

 練習後の自主練習。町田はひたすら打撃向上に努めてきた。「体が小さい分、スピードでは負けない。体に合った打撃を練習していた」。昨年夏、1年生ながら甲子園メンバーに選ばれ「やっぱり経験は大きかった」。それでもおごりはない。青木尚龍監督(50)は町田のことを「泥だらけのグラウンドを手でならすような選手」と評する。ひたむきに野球に取り組んでいた姿勢が実を結んだ。

 絶体絶命から巻き返した。1点ビハインドのまま、9回2死二塁まで追い詰められた。町田同様に途中出場で2年生の背番号「3」敷名丈弘内野手が、起死回生の左前打で同点。最後は3番手として7回からマウンドに上がった背番号「9」の竹村陸外野手(3年)が抑えきった。層の厚さを見せつけ、青木監督も2年生の活躍に「ハートが違う。何かもってるわ」と目を細めた。

 「寮でも同い年のように接してくれる3年生のためにも絶対に終わらせたくなかった」。町田の熱い思いで勝ち取った16強。連勝記録を28に伸ばせば、兵庫県夏連覇という偉業が実現する。【浦田由紀夫】