秋季高校野球宮城県大会(17日開幕)の組み合わせ抽選が13日に行われた。南部地区1位の仙台城南は、19日の2回戦で黒川と仙台高専名取の勝者と対戦する。4番伊藤英二外野手(2年)は仙台東リトルで出場した中1の全国大会で、18人連続三振を奪って完全試合を達成。宮城野シニアに進んだ中2の6月には復興支援イベントでオリックス糸井と対戦し、三振を奪った。その後伸び悩み退部を経験。挫折を乗り越えた元天才球児が、春秋通じて初の東北大会に挑む。

 元天才球児・伊藤が初の東北大会切符獲得に向けて意気込んだ。「今のままじゃ甲子園にいけない。このままじゃ終われない」。仙台東リトルでは最速130キロを誇る剛腕で鳴らした。中1で出場した全国大会では、当時東京北砂リトルの早実清宮と並び称された元怪物が挫折を乗り越えて、再び大きな花を咲かせる。

 18連続三振での完全試合を全国で達成し、入団した宮城野シニアでは一転、苦しんだ。160センチに満たない身長が伸びず、リトルでは14メートルだったホームまでの距離が、シニアでは18・44メートルになり「違和感があった」。中2の6月にオリックス糸井と対戦した時には既に投手はやめており、練習も休みがちだった。「自分はすごい選手じゃないって分かっていた。周りからの期待とのギャップに苦しんだ」。中2の秋にはシニアをやめ、中学の軟式野球部に居場所を求めたが、最後の中総体予選は代打出場だった。

 そんな伊藤を救ったのが仙台城南の角晃司監督(56)だった。高校から声がかからず、野球をやめるのも視野に入れていた伊藤に「過去は関係ない。一緒に見返そう」と説得。無理に投手をすすめず「打つ方が好きだった」という伊藤の意向をくみ、外野手で元怪物の再生を待った。

 1年春からベンチ入りも今夏までは控えの外野手。新チームからは4番を任される。南部地区大会決勝では先制打と決勝犠飛を放ち3打数2安打で結果を出した。角監督が絶賛するのが「見たこともない異常に筋肉質な体」だ。スクワットは高校生の平均値が170キロ前後に対し、広島新井と同じ240キロを上げる。腕回り35センチ、太もも61センチを誇る。「今野球をやれているのは監督のおかげ。結果で恩返ししたい」。どん底を味わった伊藤の巻き返しが、これから始まる。【高橋洋平】

 ◆伊藤英二(いとう・えいじ)1999年(平11)8月21日、仙台市生まれ。西山小1年から野球を始め、中1で所属していた仙台東リトルで全国大会に出場。同7月に宮城野シニアに入団するも、中2の秋に退部。その後は西山中の軟式野球部でプレーした。仙台城南では1年春からベンチ入りし、2年秋から4番レフト。162センチ、80キロ。右投げ右打ち。