夏連覇を狙う大曲工は、プロ注目の最速144キロ右腕エース藤井黎来(れいら=3年)が夏の秋田大会で11人目になるノーヒットノーランを達成。自ら決勝打を放ち、1-0で大曲農を下して8強進出を決めた。

 大曲工・藤井のワンマンショーだった。投げてはノーヒッター、打者32人に計130球を投じて10奪三振4四球。最後は2者連続の空振り三振を奪い、達成した瞬間には、満面の笑みを浮かべながら雄たけびを上げた。マウンドだけではなく、6番打者としても、0-0で迎えた6回裏2死二塁、少ない好機に左前へ決勝打を放った。「1点あれば十分」とばかりに、自ら挙げた虎の子の1点を守り切った藤井は「ベストボールを1球1球投げた結果」と振り返った。

 この日の、さきがけ八橋球場に球速表示はなかった。だが球速は二の次。普段と変わらず、キレと制球だけを意識して投げた。昨夏甲子園1回戦では、後に広島へドラフト2位で入団した花咲徳栄の高橋昂也(18)と投げ合い1-6で敗れた。しかし甲子園という舞台で、球速だけに頼らない投球術を学んだ。今春は3月に右くるぶし靱帯(じんたい)を手術。ダンベルを使った指先の強化に加え、美里町の自宅から学校まで約7キロの道のりを走って通い、下半身も鍛えた。

 「フォームが安定し、指のかかりも良くなった」というこの日はフォークを封印。外角中心の直球とスライダーで相手打線をほんろうし、外野飛球1個にとどめた。4四球中3個はフルカウントから献上。本人は「球数が多くなってしまった」と反省するが、藤原勝大捕手(2年)は「攻めた結果。外れたけど低めのいい球だった」と擁護した。阿部大樹監督(46)も「経験を生かしてよく粘って投げてくれた。大黒柱として打点も挙げてチームを引っ張ってくれた」と評価した。

 明日20日の準々決勝は3回戦の秋田工戦で計22安打18得点の本荘と対戦する。藤井は「ここで接戦を経験できた。無失点に抑えていればチャンスが来て得点してもらえる」と味方打線を信じてマウンドに立つ。【佐々木雄高】