第90回選抜高校野球大会開幕前日の22日、甲子園で開会式リハーサルが行われ、おかやま山陽の堤尚彦監督(46)が乙訓(京都)の市川靖久監督(35)に、敵に塩ならぬ手土産を贈った。恒例の監督対談後に堤監督が差し出したのは、岡山特産の手延べそうめん。異例の“おもてなし”に、初出場の市川監督は「ぼくは何にも用意してなくて…。普通は用意されてるものなんですか?」とたじたじ。さらに堤監督は「奥様に」と、自宅近くの養蜂場で作られたはちみつも準備していた。

 手土産は陽動作戦? 実は抽選での対戦決定から、堤監督は先制パンチを繰り出してきた。市川監督を「かっこいいですね。靴おしゃれですね」とべたぼめ。この日の対談でも「対戦が決まってから岡山に京都の人が増えたような…。視察ですかね?」と、硬軟織り交ぜた心理戦を仕掛けた。乙訓は公立ながら昨秋の京都を制し、近畿大会でも神港学園や智弁学園を破り、智弁和歌山もあと1歩まで追い詰めて4強入り。昨夏の甲子園出場監督が、強豪私学食いのジャイアントキリングを連発した敵将を、少し慌てさせたかもしれない。

 そんな前哨戦を終えると2人は笑顔で話し込んだ。市川監督は知人を通じて、青年海外協力隊でジンバブエやガーナ、インドネシアなどで野球を教えた異色の経歴を持つ堤監督の人となりを知人から聞いていた。「これ1度だけでなく、これからも練習試合などでお付き合いさせていただきたい」。手土産のお返しは白星で? 注目の対戦は、第6日第2試合(28日予定)に行われる。

 ◆堤尚彦(つつみ・なおひこ)1971年(昭46)7月26日生まれ。都立千歳(現芦花)から東北福祉大に進み、卒業後に青年海外協力隊員としてジンバブエで野球の普及を指導。ガーナやインドネシアなどでも代表監督やコーチを務めた。06年からおかやま山陽監督に就任。昨夏甲子園初出場。社会科教諭。

 ◆市川靖久(いちかわ・やすひさ)1982年(昭57)12月22日生まれ、京都府出身。鳥羽では00年に主将で外野手として春夏連続甲子園に出場。京都教育大を卒業後、05年から北稜の監督、15年から乙訓監督に就任。保健体育科教諭。