高校野球特集の第2回は、日刊スポーツ記者が全国の有望打者にスポットを当てる「ピカイチ打者編」。

 プロ注目で高校通算43アーチの九州最強スラッガー、文徳(熊本)の萩尾匡也外野手(3年)が、甲子園での対戦を熱望する大阪桐蔭(北大阪)を目標に、97年以来3度目の聖地の夏切符を目指す。名門九州学院や熊本工、昨夏4季連続甲子園の秀岳館などが集う激戦区だが負ける気はない。

 プロ複数球団が注目し、九州NO・1スラッガーの呼び声が高いのは文徳4番の萩尾主将だ。5月の大分との練習試合でエース左腕から「打った瞬間分かった」と、左中間に推定飛距離130メートルの高校通算40号をたたき込んだ。

 就任8年目の平井洋介監督(40)は「スイングスピードが上がり、ボールを呼び込む力が出てきた」と評価する。指揮官によるとスカウトから「春の九州大会のチームの中ではスイングスピードが一番速い」という声もあり、春以降は課題だった右中間の本塁打も量産した。昨年12月に室内練習場が完成し、練習が天候に左右されなくなったことも大きかった。トレーナーによる筋力トレーニングも週2回から4回に増え、木製バット1000スイングの振り込みの効果が出た。

 発奮材料もある。今センバツVの大阪桐蔭の投手兼任の根尾昂内野手(3年)とエース柿木蓮投手(3年)は中学時代から意識してきた存在で「甲子園で対戦し2人の球を打ってみたい」と燃える。萩尾は中学時代、熊本県屈指の公立進学校の済々黌を狙えるほど成績優秀だったため、文武両道の模範生として根尾と共に顔写真入りでボーイズリーグ新聞に掲載されたことがある。佐賀出身の柿木とはボーイズリーグの対戦があり、当時から好投手として意識してきた。

 さらには熊本地震からの復興の支えにもなる。高校入学直後の震災で約1カ月間練習中止。避難所や車中泊も経験した。いまだ仮設住宅の生活者も多く「勇気を与えられるよう、高校球児としてハツラツとプレーしたい」。“火の国”打線で初戦から死力を尽くす。【菊川光一】

 ◆萩尾匡也(はぎお・まさや)2000年(平12)12月28日、熊本・大津町生まれ。野球は10歳から室小軟式野球部で始める。中学は北熊本ボーイズ所属。文徳では1年春から4番を任され、高校通算43本塁打。あこがれは日本ハム横尾、大田。書道4段。右投げ右打ち。180センチ、84キロ。家族は両親と姉2人と兄。