99年夏以来の甲子園返り咲きを狙う「新生」学法石川(福島)が25日、石川町の同校グラウンドで今季最後の練習試合を1勝1敗で終えた。昨年まで仙台育英(宮城)を率いた佐々木順一朗新監督(59)が9日付で就任。甲子園通算29勝を誇る名将の要望に、親交のある明秀学園日立(茨城)金沢成奉監督(52)と盛岡大付(岩手)関口清治監督(41)の甲子園監督2人が足を運び、豪華カードが実現した。今春センバツ出場の明秀学園日立には5-11の7回日没コールドで敗れたが、来春のセンバツ出場が確実視される盛岡大付に14-5で快勝し、名門復活を予感させた。

甲子園の常連監督が集まり、学法石川の裏山頂上にあるグラウンドがにわかに活気づいた。当初、盛岡大付が明秀学園日立に出向く予定だったが、学法石川からの試合打診に金沢、関口の両監督は「佐々木監督に足を運ばせるわけにはいかない」と急きょ駆け付けたという。佐々木監督は「『僕が苦しんでいる姿を見たい』と来てくれましたが(笑い)、ありがたいですね」と感謝した。

就任してまだ2週間。歓送迎会などに追われる中、1、2年生部員63人全員と面談を行い、50メートル走、ベースランニング、遠投などのデータ収集も済ませた。「まず名前と顔を一致させて個々を知ること。真面目でいい子たちが多い。横スタートで見ている」とチームの把握に努めている。

就任後は週末ごとに練習試合を組み、この日で6校と計10戦をこなした。主力中心に野手を入れ替え、投手力を試している段階だ。盛岡大付戦は計16安打で14得点。1年時から主力の4番藤原涼雅内野手(2年)も3安打2打点と活躍した。投げては4投手の継投で5失点にまとめた。

身ぶり手ぶりを交えて積極的に指導した佐々木監督は、「いいところがいっぱい見えた。(データの)値を見ても中間層が多い。これでバッテリーがしっかりすれば十分に戦える」と手ごたえを感じている。さらに「野手もできるピッチャーがいれば、守備も楽になる」と話す。主将の桑山武冴志(むさし)内野手(2年)は「勝って自信になりました。気持ちの持ち方とか、今まで以上に細かいことを教えてもらい、プラスになることしかありません」と指導力に心酔する。

指導者の育成にも尽力する。伊東美明部長(32)、前監督の上田勇仁コーチ(32)ら若いスタッフ4人全員が残る。「僕の子どもと同じような年齢。チームのことをよく分かっているので、(選手に)考えを浸透させるパイプ役にもなってくれる」と期待する。

仙台の自宅に妻子を残して単身赴任。学校に近い2LDKの集合住宅で結婚後初めての1人暮らしをスタートさせた。「この年で再出発できる。(不安より)やりがいの方が勝っている」と前向きだ。試合後は両監督と談笑。来夏甲子園での再会を誓い合った。【佐々木雄高】