今夏第3シードの常葉大橘は、県高校最速147キロの直球を誇るエース市川大晴(たいせい=3年)が、最後の夏に向けて着々と準備を進めている。

今春は球が走らず、打ち込まれる場面が目立ったが、ライバル校との一戦を機に復調の兆しをつかんだ。感覚を取り戻し、チームを7年ぶり4度目の甲子園へ導く。

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市川は、今春の県大会を険しい表情で振り返った。「スライダーが抜けて精度が悪かった分、まっすぐを狙われた。野手に助けられた大会でした」。手応えを感じた試合は、準々決勝の常葉大菊川戦のみ。1点を追う5回から登板し、3安打無失点。逆転勝ちにつながる投球を披露したが、相手4番の伊藤勝仁外野手(3年)に147キロの直球を中前打され「1番自信のある球を打たれた。夏までにもっとキレを増す必要性を感じました」。

昨夏はエースとして2試合に登板。静岡との3回戦では先発で4回3失点。チームを勝利に導くことができず「重圧に負けて、期待に応えられなかった」と悔やんだ。同秋もエースとして臨んだが、地区大会敗退。県大会への連続出場を19年で途切れさせてしまった。春に巻き返すため、冬は走り込みと筋力トレーニングで体を追い込んだ。その結果、最速142キロだった球速を5キロアップさせるまでに成長した。

春季大会後も調子が上がらず苦しんだ。それでも、5月下旬に行われた常葉大菊川との定期戦で先発し、2回1安打無失点。4番の伊藤を144キロの直球で三振に打ち取るなどし「久しぶりに満足のいく投球ができた」と笑顔。現在は直球で打ち取れる配球を勉強しながら、得意のスライダーに磨きをかけている。徐々に感覚をつかみ、夏への自信を深めている。

元々はサッカーをやりたかったというが、静岡商野球部OBの祖父・畑田康彦さんの影響で野球を始めた。以来、県外の試合でも欠かさず応援に来てくれる畑田さんの後押しを受け「祖父は甲子園に縁がなかったので、連れて行ってあげたいです」と市川。最後の夏、剛速球を武器に周囲の期待に応えてみせる。【河合萌彦】

◆市川大晴(いちかわ・たいせい)2001年(平13)8月27日、静岡市生まれ。小2から西奈南野球スポーツ少年団で野球を始めた。常葉大橘高では1年秋からメンバー入り。昨夏はエースとして2試合に登板。今春県大会で県高校最速の147キロを計測した。右投げ右打ち。175センチ、71キロ。家族は父。