第3シードの立花学園が、神奈川商工を5回コールドで破り、3回戦進出を決めた。公式戦初先発の小川真憧(まなと)投手(2年)が、5種類の変化球を駆使して、5回2安打無失点の好投を見せた。同校は今年2月から投球の回転数、球速、変化量などを計測できる測定機器「ラプソード」を導入。投手力の向上に役立てている。

初先発で大役を果たした小川は「緊張したけど、ランナーを背負ってからは吹っ切れて自分の投球ができました。カーブでカウントが取れてよかったです」と白い歯を見せた。通常のカーブに加え、球速の速いパワーカーブ、縦横のスライダー、チェンジアップと5種類の変化球を操る。得意の縦スライダーは、ボールがジャイロ回転しながら鋭く落ちるという。「ラプソード」では、ボールの回転軸も計測できるるため、それぞれの変化球の習得にも効果的。小川も「球速や回転数もそうですが、回転軸が数値で分かるので、投げやすい」と振り返る。

この日登板のなかったエース須田悠斗投手(3年)も最速130キロ台前半ながら、直球の回転数は「プロ並み」とされる約2250回転。一般的な高校生投手で約1900回転とされ、いわゆる「キレ」の良さが数値として現れる。「球速も見ますが回転数を重視しています。過去のいい時のデータもあるし、自分の感覚が数値化されて投球の目安になります」と効果を実感している。

ラプソードは、近年のメジャーリーグや、日本のプロ球団も導入している測定器「トラックマン」に比べ小型で簡単に設置が可能。日本の高校で導入しているのは立花学園を含め、全国でも数校だという。導入に踏み切った志賀正啓監督(33)は明大農学部出身の理科教諭で数字に強い。投手だった現役時代から「自分がいいと思う感覚と周りが『いい球』と言うボールの感覚にズレを感じていて、なんとかそれを可視化したいと考えていた」という。6月下旬にはラプソードの内容がバージョンアップされ、さらに細かなデータも計測可能になった。相手ではなく自らを徹底分析する「データ野球」で、戦国神奈川の頂点を目指す。【鈴木正章】