試合の裏に、高校野球ならではのドラマがあります。「心の栄冠」と題し、随時紹介します。

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第一カッター球場に、元気なアナウンスが響き渡った。千葉大会2回戦のアナウンスを担当したのは、津田沼(千葉)の女子マネジャー満永歩実さん(17)と伊藤彩芽さん(18)だ。津田沼は今大会、3年生部員12人全員が受験に切り替え引退した。3年生が1人もいない場合は出場できない大会規約に抵触し、チームは出場辞退。それでも2人のマネジャーは球場アナウンス係として参加した。

高校野球を全うすると決めた。辞退が決まったとき2人は電話で涙した。「高校野球、終わっちゃったね」。活動自粛のままの引退。気持ちの区切りがつかなかった。「みんなが決めた結果だから受け止めるしかない」と言い聞かせても、野球への思いは吹っ切れない。日暮裕太部長(33)に球場アナウンス係を提案され参加を決めた。

ハッキリと滑舌よく選手の名前を告げる。2人の声に後押しされ習志野ナインが躍動した。「自分のチームの夏の姿を見たかった」試合後、2人はちょっぴり寂しそうにほほ笑んだ。

甲子園が中止になった今、それぞれ、高校野球への区切りの付け方がある。伊藤さんは「マネジャーという仕事を全うできた。達成感が湧きました」。最後の夏を全力で駆け抜けた。