3年ぶり14回目の優勝を決めた浦和学院の森士監督(57)が、今夏限りでの退任をサプライズで公表した。家族として、部長として、近くで見てきた長男の森大部長(30)は「なんとか父を勝たせたかった。甲子園で勝つことがもちろん大事ですが、まずは行くことができてよかった」と安堵(あんど)の表情だった。

身内も驚いた発表だった。森士監督は、試合後の優勝インタビューで「まだ選手にも伝えていないんですけど、この夏をもって監督を退任しようと思っています」と切り出した。本来は学校に戻ってからのミーティングで、まず選手に伝える予定になっていた。「びっくりしました。でも、あれがよかったのかもしれません」と笑いながら、父の思いをくんだ。

“浦学ファミリー”の力を、いつも感じている。決勝戦に臨む朝、練習グラウンドにはOBが集結。選手バスの出発を、見送ってくれた。「歴代のOBの方々が、父の背中を押してくれました。浦学のつながり、いろんな人の伝統。そういう思いが大事です。ありがたみを感じました」。森士監督の次男であり、社会人・鷺宮製作所の森光司コーチも、大会中はブルペン捕手として練習場に通ってくれた。

監督と選手として、監督と部長として“親子鷹”を経験してきた。森大部長自身は浦和学院での現役時代に投手として、08年夏の甲子園に出場。1回戦で横浜に5-6で敗れた。その後早大、三菱自動車倉敷でプレーし、現役引退後の16年からコーチに就任した。18年の夏の甲子園には部長と監督の“親子鷹”で出場。現場で、ともに苦難を乗り越えてきた。

「父であり、野球としては師」と尊敬する。仲のいい家族で、何でも言い合えるからこそ、ぶつかることもあった。練習を休む、休まないで口論になったこともある。

監督退任は、2年前から知らされていた。父の監督として30年の節目に立ち会い「最後の夏、なんとか甲子園に行くという思いだった。今日はホッとしています」。

県大会優勝は、まだ通過点。最後の大舞台は聖地甲子園だ。伝統と歴史を、親子でつむいでいく。【保坂恭子】