7年ぶり11度目の出場を決めた浦和学院(埼玉)は、昨秋に父の後を継いだ森大(もり・だい)監督(31)が初めて甲子園で指揮を執る。吉報を受け「関東大会を終えてから、この日まで不祥事を起こさないようにと。ホッとしました」。父は甲子園で春夏通算28勝を挙げた森士(もり・おさむ)氏(57)。「実はそんなにセンバツに向けて『こうしなさい』というアドバイスは受けていない。監督の色を出したい。私たちの売りは若さと熱意。本気度は名将に負けないぞと思っている」と意気込んだ。

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昨秋の就任後、父とは違う、独自色を打ち出した。打力アップとともに「脳を鍛えよう。脳トレです」。自らが監督の父とともに投手として出場した夏の甲子園で、横浜・筒香嘉智(現米大リーグ・パイレーツ)に本塁打を打たれた経験がある。マウンドで「フワフワしていた」。浮足立っていた。だからこそ、選手たちには「どっしりプレーすることを期待している」。早大の大学院で心理学を学んだ。コミュニケーション能力、平常心や洞察力をつけるため、選手に小論文、読書感想文を課し始めた。

最初は約400字を書けない選手もいたが、月3回程度の訓練をへて、200字ずつ増やし、現在は1000字をこなす。就任直後は「生徒と話していて(自分の話を)どれくらい理解しているか疑問だった」が、心中の表現を増やすうちに、選手自身が紅白戦で監督を務められるほど思考能力を上げたという。

最速142キロのエース左腕、宮城誇南投手(2年)は自己啓発本『「のび太」という生きかた』(アスコム)を読書感想文に選んだ。「しゃべることが元々得意じゃなかった。自分の考えを書くことでアウトプット力を身に付けた。甲子園は展開が早くてコミュニケーションを取る時間が限られる。(捕手と)思いを共有しないと。やってよかった」と感じている。

自らの気持ちをを表現する力は、私生活にも及んだ。大監督の就任後「コンビニタイム」が増えた。週に1、2度、コンビニエンスストアに買い出しに行ける時間が確保された。士前監督時代は不定期で、コンビニタイムが実施されない週もあったが、黙々と耐えるだけだった。小さいことだが、寮生活の高校生には大問題。「自分たちの意見を採用してもらった」という経験として捉えている。

大監督は、いやが応でも、父と比較される。「仕方ないですよ。覚悟を持って、親子としてずっといい関係でいられる。森大として頑張っていかないと」。今大会は、花巻東の佐々木洋監督、麟太郎内野手も親子で注目されている。「花巻東のあの子すごいですよね。親子は僕だけじゃない。野球を通じて親子の絆が生まれるのはいいかも」。肩肘張らずに、甲子園では9年ぶり2度目の優勝を目指す。【斎藤直樹】