第104回高校野球選手権で優勝し、東北勢の悲願だった優勝旗の「白河越え」を成し遂げた仙台育英(宮城)。勝利監督インタビューで須江航監督(39)が発した「青春ってすごく密」のフレーズは、瞬く間に日本中を駆け回った。チームは23日に帰郷。同校の宮城野校舎で行われた優勝報告会でも、「須江節」で聴衆の心をつかんだ。

最初はナインを代表し、佐藤悠斗主将(3年)があいさつに立った。「すべての人たちにご協力をいただいての優勝だと思っております。自分たちにとって、ここにいるすべての皆様にとって、東北のすべての皆様にとって、この夏のいい思い出になったことをすごくうれしく思います」と謝辞を伝えた。

代わってマイクの前に立った須江監督は「今、キャプテンからちょっと堅苦しいあいさつがあったので、普通にみんなと話してみたいと思います」と冗談めかし、「応援の皆さん、どうでしたか? 甲子園は。暑かったですか?」と普段と変わらないトーンで語りかけ、素直な思いを口にした。

「(初戦2回戦の応援に)出発したときに、まさかこんなに長くいると思ってましたか? 自分たちは優勝するぞという目標を立てて、信じていましたが、たぶん宮城県のみなさんも、最後までいるという具体的なイメージを描いていた人は、正直あまりいないんじゃないかなと思います。でもそういう中で、1戦1戦、『負けたらやだな』ではなくて、『持っているものを出し切るぞ』、『1戦必勝だぞ』と思わせてくれたのは、本当にみなさんのおかげです。吹奏楽部の音楽がちゃんと聞こえているときは、監督もスクイズのサインをミスらなかったりする。ちょっと集中しすぎちゃって、あまり音が聞こえてないときには、周りが見えていなかったり」

5試合を勝ち抜いた大会を振り返りながら、感謝を述べ、ときには笑いを誘った。

下関国際(山口)との決勝戦。甲子園は仙台育英の「ホーム」のようだったという。「球場の雰囲気っていうのが本当にある。球場の雰囲気が仙台育英のときは、不思議と何をやってもうまくいく。(決勝戦は)宮城大会の1回戦とほとんど変わらない雰囲気がありました。ホームで戦えたような雰囲気だった」。

その雰囲気を醸し出してくれたのは、アルプス席からの声援だった。「そういう雰囲気は応援のみなさんのおかげ。チアリーディングの皆さんの華やかさ、控えの選手がメガホンをたたく音、声は出せないですけど祈る思い、そして学校以外にも地域のみなさんの思いとか、そういうのが1戦ごとにどんどん大きくなっていって膨れていきました」と感謝した。東北の思いが結集した優勝の喜びをかみしめた。

5分弱のスピーチの中で、須江監督が「みんな」、もしくは「みなさん」を口にしたのは14回。語りかけた全員で成し遂げた優勝だと強調し、「今日僕たちは、壇上に立ってこうやって祝ってもらっていますけど、本当にみんなで喜びを分かち合いたいなと思っています」。夏の終わりは早い東北だが、日本一の興奮はしばらく冷めそうにない。【浜本神威】