日本の守護神が上々のスタートを切った。ドラフト候補の高校日本代表主将の近江・山田陽翔投手(3年)が8回、4番手として登板。大学日本代表を相手に1回を無安打3奪三振1四球で抑え、代表初登板を無失点に封じた。今夏甲子園では全5試合に先発し、通算11勝目を挙げたが、代表では守護神に座る。試合は1-4で敗れたが、本番のU18W杯(9~18日、米フロリダ州)に向け、弾みを付ける結果となった。

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8回、山田陽翔の名前がコールされると、この日一番の拍手がZOZOマリン全体から沸き起こった。歓声に応えるように、山田は躍動した。

先頭の中大・森下を140キロ台直球で追い込み、決め球のスライダーで空振り三振。続く上武大・進藤に四球を与えたが、3球目にはこの日最速148キロをマークした。さらにギアは上がり、仙台大・辻本、明大・宗山から2者連続三振を奪い、無失点に封じた。完璧に近い投球にも「3つの三振を取ったが四球はもったいない。次の登板ではなくしたい」と、ベンチに戻るまで真剣な表情が崩れることはなかった。

甲子園では二刀流で輝き、通算11勝を誇る先発型。だが今は、真っさらなマウンドで投げることも、4番打者に座ることもない。日本代表の山田は、終盤の窮地に登場する。「終盤から投げるのは野球人生で経験していない。いつブルペンに入ればいいのか」と、困惑もある。それでもこの日は仲間の気配りや、「ブルペン行くか?」という声掛けが支えとなり、スムーズな調整で試合に入ることが出来た。

この日まで万全な過程を歩んでいたわけではない。甲子園の疲れが残っていた。30日、馬淵監督は「山田は肘の張りが取れていない。本当は投げさせたくないが、本人が投げたいと。1イニング限定で」と話していた。近江では、ひじの張りがある中でも登板して調整していた。それが山田なりの調整方法だった。

試合後に行われた壮行会では「日本代表として恥じのないプレーをして、必ず世界一を取って帰ってきます」と、高らかに宣言した。タイブレークが多い国際大会。馬淵監督は「山田が2イニングいくこともある」と話すなど、抑えに求められる役割は大きい。それでも山田の表情に不安はない。あるのは頂点への覚悟だけだ。【阿部泰斉】

▽大学・山田(3打数無安打で6回の守備から交代)「今日は納得のいく結果が出なかった。このいい経験を糧に、リーグ戦で活躍できるよう頑張ります」

○…高校世代NO・1スラッガーの浅野は、大学生の投手に封じ込まれた。1-1の5回には無死一、二塁の好機で、今秋ドラフト候補の菊地の低め変化球で二ゴロ併殺に倒れるなど、4打数無安打。「1本も打てなかったので悔しい。甘い直球を見逃して、変化球を打たされた。大学生は変化球のキレがすごかった。いい勉強になったので、この経験を大会にいかしたい」。それでも試合前のフリー打撃では柵越えを放ち、大学日本代表の選手からも印象に残った選手として名前が挙がった。

○…大学日本代表は先輩の貫禄を示した。先発した今秋ドラフト候補右腕の荘司は、2回を無安打無失点の2奪三振、最速151キロをマークし完璧な内容。8月30日は立大の下級生を中心としたチームが高校日本代表に1-5で負け「後輩たちがいいようにやられていたので、借りを返す気持ちもありました」。初回に浅野と対戦し捕邪飛に抑えたが「威圧感というか、ふところの大きさ、いい打者だなと思った。紙一重でした」と話した。

○…今秋ドラフト上位候補に挙がる二刀流・矢沢は「1番指名打者」で出場。初回に四球で出塁。4番蛭間の左前適時打で先制のホームを踏んだが、その後は2つ見逃し三振と四球で快音は響かなかった。「今日は2三振ということで、リーグ戦に向けていい課題が出た。この後のリーグ戦に向けて、もっと状態をあげていきたいと思います」と淡々と反省を口にした。

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