高校通算27本塁打を誇る栃木農の主砲バスネット・スエス外野手(3年)が最愛の母に本塁打で「ありがとう」を届ける。

ネパール人の両親の間に生まれ、「ネパール語で話していた」という家庭で5歳まで日本で育った。だが東日本大震災の影響でネパールの首都カトマンズにある母方の祖父母宅に約1年間避難。小学校2年生の時に再来日し、栃木市で野球を始めた。「外国人ということもあっていろいろ言われる時もあったけど野球が一番居心地がよかった」と夢中になった。日本語学校にも通い、1年で卒業。「今はネパール語は抜けてしまった」と笑顔を見せる。

スエスにとって支えになったのが母の存在だ。日本に再来日してしばらくしてから、1人でスエスとスエスの姉を育ててきた。180センチ、85キロの体から量産される本塁打の源も母にある。普段は日本食が中心だが「月に2回くらいはネパール料理が出る」という。スパイスの効いた鶏肉料理が大好物だ。

栃木農で主将となった時、重圧から結果が出ず主将の役割が果たせなかった。「本気で野球を辞めようと思った」という。だがそんな時にも母の「ここまでやってきたんだから踏ん張りなさい」という言葉で主将として最後の夏を迎えることができた。

スエスが覚えているネパール語がある。「ありがとう」という意味の「ダンニャバード」という言葉だ。「この夏は今まで支えてくれたお母さんに恩返しが一番。ホームランを見せたい」とこの夏は母にプレーで感謝を伝える。大学や社会人チームから誘いもあったが、「今度は自分が母を支える」と野球は今夏までだ。「ホームランを打てばチームの勝利にもつながる」とまずは9日に控える初戦の足利大付戦でアーチを掛ける。この夏はスエスが野球人生を懸けて数え切れない「ダンニャバード」を母に届ける。【黒須亮】

◆バスネット・スエス 2005年(平17)5月26日生まれ。東京都杉並区出身。大平西小2年で大平西ファイターズで野球を始める。大平南中では軟式野球部に所属。栃木農では1年春からベンチ入り。趣味は筋トレで、ベンチプレス90キロ、スクワット140キロ、デッドリフト150キロ。握力は右手66キロ、左手68キロ。高校入学後から腕相撲では負けなし。180センチ、85キロ。右投げ右打ち。