<高校野球静岡大会:常葉学園菊川3-2静清>◇25日◇準々決勝

 4強がそろい、静清が散った。第1シード常葉学園菊川がセンバツ出場の静清を破った。前日の4回戦で右足を痛めながら強行先発出場した海野桃次郎(とうじろう)内野手(3年)が、大会NO・1投手の野村亮介(3年)からサヨナラ左前打を放った。ほかに静岡、韮山とノーシードの磐田東が明日27日の準決勝に進出した。

 満塁策で回ってきたサヨナラのチャンスに、海野は痛みを忘れた。力みすぎた初球は空振りしたが、次第に力は抜けてきた。マウンドの野村と互いに息をのみながら、5球目の直球。「何がくるかなんて考えていなかった。『打ちにいくぞ』という気持ち」。レフトへ転がった打球がサヨナラ勝ちを決めた。前日4回戦静岡南戦で、自打球を右足に当て負傷交代した。痛めた右足を引きずりながら一塁まで走ると、歓喜の輪に加わった。

 強行出場する気持ちは、前夜に固めていた。試合中に直行した病院での精密検査の結果、骨に異常はなかった。患部を冷やして応急処置はしたものの痛みは残った。それでも「絶対に試合には出る」という気持ちを森下知幸監督(50)に伝え、この日は痛み止め薬を飲みながらグラウンドに立った。守備では内野フライの際、外野が全力疾走で近寄ってきた。仲間のバックアップをバットで恩返しした。

 海野の姿に、ナインも燃えないはずがなかった。フォークボールなど野村の落ちる変化球を恐れず、振りにいったからこそ、最速145キロの直球を序盤から打ち返せた。3回に左翼線二塁打で同点とした3番近藤亮(3年)の一撃がそうだった。「海野の気持ちが伝わってきた。オレもやらないといけない」と、快速球をはじき返した。

 今大会4度目の校歌斉唱は、機材の故障で場内に音楽が流れなかった。「せーの」の掛け声でアカペラで歌い始めると、応援席が合唱してくれた。「気持ちよかったです」と声をそろえた。3年ぶり甲子園まであと2勝だ。【栗田成芳】