<高校野球静岡大会:磐田東6-3韮山>◇28日◇準決勝

 決勝の舞台には、8年ぶり22度目を狙う静岡と、春夏通じて初の甲子園を目指す磐田東が進出した。磐田東はエース阿部智弘(3年)が4回から救援登板。韮山を1安打に封じ、今大会の無失点記録を31回1/3に伸ばした。

 緊急登板のマウンドも、阿部にとってはいつもと変わらなかった。先発した永田大貴(3年)が韮山打線にタイミングを合わされ、3回途中で降板。2回終了と同時に準備を始めていた。「流れが悪いときの交代は、先発より難しい。自分の投球で流れを変えたかった」。変化球中心にテンポよく投げ込み、打撃にリズムを生むと終盤に勝ち越し。最後の打者を遊飛に打ち取ると小さく拳を握りしめた。

 これで今大会全6試合に登板し、31回1/3を無失点に抑え続ける。エースの奮闘に山内克之監督(56)も「阿部さまさまだよ。この成長はすごい」とうなった。前日の夕食は特製メニューを用意され、午後10時に就寝。朝5時半に起きると散歩で体をほぐす。ウオーミングアップでダッシュしたときに足が軽ければ、好調の証しだ。「同じサイクルで自分のペースで準備をしっかりできている」と好調の要因を明かした。

 9回完封した準々決勝掛川西戦の翌日、体を休めるためにオフを与えられると、投球とは逆の右手に筆を持った。目の前の半紙には、夢中になって前向きな言葉を書き続けた。

 「モチベーションを高めることができる。『自分を持ち最後まで貫き通す力』が一番気に入っている言葉」。書道6段の腕前で書いた言葉で、心を整え、マウンドでの落ち着きをもたらした。

 磐周地区初の甲子園に王手をかけた左腕は「楽しみですね。とにかく自分の投球をしたい」。心を乱さずペースを崩さず、決勝のマウンドに立つ。【栗田成芳】