<高校野球静岡大会:静岡12-4常葉学園菊川>◇28日◇準決勝

 決勝の舞台には、8年ぶり22度目を狙う静岡と、春夏通じて初の甲子園を目指す磐田東が進出した。静岡はエース原崎匠人(3年)が超スローカーブで揺さぶり、第1シードの常葉学園菊川打線を翻弄(ほんろう)。14安打浴びながら4失点で踏ん張った。

 降りしきる雨の中でも、静岡・原崎の視界には勝利しか映っていなかった。今大会最多の14安打を許したものの、ピンチをしのいで4失点で免れた。4回には2死満塁のピンチを招きながら、無失点で切り抜けた。猛打を誇る常葉菊川に向かって139球の力投。原崎は「雨は得意。いつも通りキレで勝負できた」。今大会ほぼ1人で投げきり、22度目の夏の甲子園を目指す伝統校に、3年ぶりの決勝進出を呼び込んだ。

 上昇カーブを描くチームと反比例するように、秘球がゆっくりとミットに収まった。1回の1番高崎に投げた初球の球速は81キロ。「超スローカーブ」を目にした高崎は思わず苦笑いした。準決勝からスコアボードに表示されるはずの球速は、遅すぎて測定不能だった。「直球がそんなに速くないから、少しでも速く見せられるようにしたかった」と冬場に取り組んだ新球が効果を発揮した。

 ここまで1試合1球程度投げていたが、この日は5球。ついに武器としてベールを脱いだ。決して速いとはいえない120キロ後半の直球より、約50キロ遅いスピード差を要所で披露。佐野健太捕手(3年)は「菊川対策というわけではないけど、あの打線には効果的だと思った」と、相手打者の動揺を誘った。球速表示にはあえて視線をそらし、体感速度にこだわった原崎は「あの球を見せれば、直球が速く見えると思う」と不敵に笑った。

 決勝でも連投が予想されるが「やることをやるだけ」と言い切る。名実ともに静高のエースとなった。【栗田成芳】