第93回全国高校野球選手権が今日6日、甲子園球場で開幕する。福島第1原発事故と闘う福島の期待を背負う聖光学院は、初日の第3試合で日南学園(宮崎)と対戦。5日に最後の調整を終えたプロ注目の最速145キロ右腕、歳内宏明(3年)は「全試合登板V」を宣言した。松坂大輔(横浜)や斎藤佑樹(早実)が成し遂げたように、決勝までの6試合を投げ抜いて、チームを頂点に導くつもりだ。

 初戦を翌日に控えた歳内は、兵庫県内のグラウンドで59球を投げ込み、最後の調整を終えた。日南学園の打順通り、左右に打者を置いて実戦を想定し、時には死球になるほど内角を厳しく突いた。直球も、落ちる決め球のスプリットも「すべての球種が好感触」。34回2/3を投げて計60三振だった福島大会から、さらに状態が上向いている。「まずは初戦に全力を尽くす」と言った後、こう宣言した。

 歳内

 1回戦から決勝まで6試合。すべて自分が投げ抜く覚悟でいます。それに耐えられるだけの練習をしてきたつもりだし、日本一に導くのが自分の仕事。

 過去、そうそうたる投手が遂げた「全試合登板V」の系譜を継ぐ。98年の松坂は全6試合、06年の斎藤は決勝再試合を含む7試合すべてに登板。昨年、聖光学院が準々決勝で敗れた興南(沖縄)の島袋洋奨(中大)も全6試合に先発し、優勝旗をつかみ取っている。

 斎藤智也監督(48)も「優勝してきた大投手は、ほかの人間をマウンドに上げさせなかった。歳内にも、そのイメージで甲子園に入れと言ってきた」と期待。2番手に最速142キロ右腕の芳賀智哉(3年)も控えるが、試合を通して絶対エースをさらに進化させる。

 偉業への挑戦も、歳内にとっては自然体。福島大会は、昨夏から2年連続で全6試合に志願登板して制覇した。温存されるより、投球を重ねることで調子を上げていくスタイル。甲子園でも変えるつもりはない。

 2年生で8強入りした昨夏から1年。「精神的にも技術的にも成長した姿を見せたい」。東日本大震災、福島第1原発事故と闘う地元へ、東北初の大旗を-。歳内の集大成の夏が、ついに幕を開ける。【木下淳】