<全国高校野球選手権:明徳義塾3-2北海>◇7日◇1回戦

 センバツ8強の北海(南北海道)が、明徳義塾(高知)に9回サヨナラ負けを喫した。同校の春夏通算甲子園30勝目はお預けとなったが、3年生外野手トリオが発奮。今夏は控えも多かった銭谷恒毅中堅手が4回に左中間へ同点二塁打。続く5回には4番川越誠司右翼手が一時は勝ち越しとなる適時打を放った。右足太もも肉離れで戦列を離れていた石川圭太左翼手も強行出場し、3人を中心に好打や美技で「北海野球」を随所に披露した。

 夏の終わりを告げる打球が目の前に転がってきた。北海右翼手の川越は基本通り、腰を落として捕球。視線の遠方には、明徳義塾のサヨナラの走者が本塁手前で小さくジャンプして生還するのが目に入った。力を尽くした2時間16分。3万2000人の観衆から拍手を受け、全国最多タイ35度目の夏が幕を閉じた。

 川越は「こういう結果になり悔しい。自分たちの力は出し切りました」。試合直後は涙をぬぐっていたが、しばらくすると穏やかな顔で話した。自分に課したテーマを立派にやり遂げた。つなぎの4番として、1-1で迎えた5回表1死一、三塁。高めの直球をコンパクトに振り抜き、勝ち越しとなる右前適時打を放った。

 センバツ準々決勝の九州国際大付(福岡)戦。風で右飛の目測を誤り失点につながった。1点差の敗戦。夢舞台で守りの大切さを痛感した。この日の守備では、5回裏2死一、二塁で右翼線を抜けるかという難しい打球をスライディングしながら好捕。戻ってきた甲子園で2年生エースを支えた。

 7番中堅で先発した銭谷は、センバツで計7打数1安打の不振に泣いた。5月春季大会からスタメン落ち。「悔しさはここで晴らすしかない」。甲子園での先発起用に燃えた。4回、貴重な同点二塁打を左中間に放った。先制を許す被弾の直後、チームに活気を取り戻す一撃だった。

 外野手トリオのもう1人、石川は南北海道大会準々決勝で右足を肉離れ。一番大事な時期に戦列を離れ「仲間には迷惑をかけた。痛みのことは忘れてました」とテーピングをして出場。6回左翼線への飛球を好捕。7回には快足を生かし遊撃内野安打。「最高の舞台、最高のメンバーで臨もう。悔いがないように」と平川監督が決断した先発復帰に、しっかりと応えた。

 夏17年ぶりの勝利は届かなかった。春を含め甲子園4試合とも勝っても負けても1点差、競り合って強くなっていった。西尾匡人主将(3年)は「皆がいたからここまで来られた。これ以上はない、最高のチームでした」。60年の春4強、夏8強の北海最強のチームを超えることはできなかったが、日焼けした顔は誇りに満ちていた。【中尾猛】