<春季高校野球福島大会:光南10-3小高工>◇17日◇1回戦◇開成山野球場

 プロ注目左腕が13奪三振で白星発進だ。昨年は震災の影響で中止となった春の福島県大会が開幕。光南の佐藤勇投手(3年)が9回1死まで130球3失点の力投で、昨夏4強の小高工を下した。

 苦しんでつかんだ勝利だった。プロのスカウト陣と開会式から残った他校の選手らが見つめるマウンドに、本来の佐藤勇の姿はなかった。4点の援護をもらった1回裏、2死三塁から小高工4番の鈴木康平一塁手(3年)に適時二塁打を浴びる。佐藤勇が「県内の公式戦では記憶にない」という右越えの長打だった。続く打者にも適時打を許し2失点。県内NO・1の呼び声高い左腕の乱調に、球場がどよめいた。

 雷が流れを変えた。3点目を失った直後の2回裏2死二塁、突然の雷雨で試合が12分間中断した。ここで菅波智之監督(42)から「直球を狙われている。変化球もうまく使え」と助言を受けると、この日最速141キロの直球に鋭く曲がるスライダーを織り交ぜ、相手打線を翻弄(ほんろう)。3回以降は三振の山を築き、9回1死まで無失点に抑えた。佐藤勇は「初戦で力んでしまったが、気持ちも切り替えられた。雷が鳴ってくれてよかった」と照れながら天気に感謝した。

 プロの高評価は変わらない。楽天上岡スカウトは「下半身がしっかりしているし、今後も注目していきたい」。中日中田スカウト部長は「右打者の膝元に来る直球がいい。楽しみ」と話す。県大会の初戦では異例ともいえる、10球団17人が視察に訪れた左腕への期待の大きさがうかがえる。

 次は聖光学院にリベンジだ。昨秋の県大会で1-2で惜敗した相手と21日の2回戦で早くも激突する。「自信はある。今度は勝ちます」。県内66連勝中の王者に佐藤勇が挑む。【鹿野雄太】

 ◆佐藤勇(さとう・いさむ)1994年(平6)9月8日、福島・西郷村生まれ。小田倉小5年時に小田倉ソフトボールスポーツ少年団で投手としてソフトボールを始める。西郷二中で野球部に入部。2年秋からエースとなり、県南選抜にも選ばれる。左投げ左打ちだが「野球以外は右利き」。目標の選手は菊池雄星(西武)沢村拓一(巨人)。家族は母、姉、兄3人。181センチ、75キロ。血液型B。