<高校野球秋田大会:秋田工7-0雄勝>◇13日◇1回戦◇八橋総合運動公園球場

 秋田工の左腕・登藤結実(とどう・みのり)投手(3年)が、雄勝相手に8回参考ながら19奪三振で無安打無得点を達成した。女手ひとつで育ててくれた母里織(さおり)さん(41)への感謝を込めた103球だった。

 まさに快刀乱麻だった。秋田工・登藤は8回を無安打、19奪三振。雄勝に手も足も出させなかった。最速は「131キロ」と言うが、高めの直球は威力抜群。バットはことごとく空を切り、三振の山を築いた。最後は6者連続。かすりもさせなかった。「こんなに取れたのは初めて。ノーヒットノーランも初です」。味方が8回裏に4点を奪い、コールド試合が成立。参考記録となってしまったが「打ってくれた方がいいです」と援護を喜んだ。

 昨夏は優勝した能代商に1-4で敗れ、3回戦敗退。後に甲子園で2勝する保坂祐樹投手(現中大準硬式野球部1年)に歯が立たず、投ゴロに倒れて最後の打者となった。「テンポがよく、打席で考える時間がなかった。そこをまねた」。この日は、佐々木鷹介(ようすけ)捕手(3年)からの返球直後には投球モーションへ移行。相手に余裕を与えないことで、明らかなボール球も振らせた。

 喜んでばかりはいられない。登藤には、好投を続けなければならない理由がある。この日のスタンドに母の姿はなかった。「仕事だと思う」。幼少期から女手ひとつで育ててくれた里織さん。中学時代には「学校から呼び出しを受けて迷惑をかけた」と悲しませたこともあった。だが今は違う。早起きして自分の弁当を作るなど自立心が芽生えた。「次は来てくれると思うし、いいところを見せたい」と恩返しの投球を誓った。

 結実(みのり)の名の由来は「努力が実を結ぶ」。1つ上の兄実吹(みぶき)さん、8つ下の妹諒香(りょうか)さんの名前と組み合わせると「実がいぶき、実を結んで香る」とつながる。最後の夏。その名の通り、甲子園出場という結果を実らせる。【湯浅知彦】

 ◆登藤結実(とどう・みのり)1995年(平7)2月2日生まれ。秋田市出身。広面小4年から「広面スポーツ少年団」で野球を始める。当時は中堅手。城東中から投手に転向。中学時に記録した16奪三振が、これまでの自己最多だった。秋田工では昨秋から背番号1。球種は直球、スライダー、スローカーブ、シュート。家族は母、兄、妹。身長175センチ、体重68キロ。左投げ左打ち。血液型A。