<高校野球長野大会:佐久長聖8-1松本一>◇22日◇決勝◇松本

 佐久長聖が「PLイズム」で、10年ぶりの甲子園出場を決めた。好調な打線が松本一相手に16安打8得点で、エース五味直也(3年)が5安打1失点完投で圧勝した。08年まで名門PL学園(大阪)で指揮を執り、4月に就任した藤原弘介監督(37)が夏初采配でいきなり優勝を勝ち取った。

 就任わずか4カ月でつかんだ栄冠だ。「ウチは打撃のチームでやってきましたから」。4月に就任したばかりの藤原監督は、試合後のインタビューで胸を張った。強力打線が16安打8得点と爆発し、10年ぶりの甲子園出場を決めた。

 1回から勢いに乗った。2番南沢勇太外野手(3年)から4連打で、あっさり2点を先制。藤原監督も「あれで楽になった」と、Vを確信した。6、7回には6安打を集中させ計5点追加し、とどめを刺した。

 甲子園から遠ざかっているチームを任され、同監督は考えた。「勝つためにはどうすればいいのか。自分が考えて何ができるのか」。PL学園時代からの指導方針である「選手の自主性」を引き出すよう努めた。ノルマを与えるのではなく、選手に考えさせた。「夏は打たないと勝てない」という信念のもと、選手が納得するまで素振りをさせた。春県大会では状況に応じた打撃を考えさせるため、あえてバントのサインを出さず、選手に考える打撃をさせて優勝を勝ち取った。

 自主性を引き出すことで目覚めた男がいる。この日1安打を放ち、今大会18打数10安打2本塁打の6番小川大樹外野手(2年)だ。4番寺尾竜生内野手(3年)が始めた朝練習前の自主練習に志願して参加した。5月から毎朝5時半前に起床。「徹底的に振り込むことができた」と、合同練習が始まる7時半前までに1時間打ち込み続けた。藤原監督も「小川はよくやっている。練習はうそをつかない」と若き大砲を評価した。

 どん底から頂点へかけ上がった。昨秋は不祥事で出場を辞退した。4月に藤原監督が就任し、宍戸建太主将(3年)は「正直かまえる部分があったけど、野球にかける思いが伝わってすぐになじめた」と一体感が増していった。徹底的に振り込んできた自信が、6試合で74安打45得点をたたき出す強力打線をつくりあげた。「まずは甲子園で1勝」。藤原監督の言葉に自信が宿っていた。【高橋洋平】

 ◆佐久長聖

 1964年(昭39)創立の私立校で、同年に野球部創部。95年に佐久から校名変更。部員数101人。生徒数は958人(女子397人)。甲子園は春1回、夏4回出場。94年夏にベスト4。OBは今井裕介(競輪選手)島田秀平(お笑い芸人)佐藤悠基(陸上選手)。所在地は長野県佐久市岩村田951。小林浩校長。◆Vへの足跡◆2回戦4-1長野商3回戦9-1丸子修学館4回戦10-0上田東準々決勝8-0上田千曲準決勝6-2東京都市大塩尻決勝8-1松本一