<高校野球福岡大会:東福岡13-1東海大五>◇23日◇5回戦◇北九州市民球場

 東福岡の149キロ左腕、森雄大投手(3年)が投打でチームを引っ張った。東海大五を5回コールドで下して準々決勝進出を決めた。打っては2回に先制3ラン、4回にフェンス直撃の右越え二塁打で5打点。投げては7~8割の力ながら、4回を2安打1失点。この夏初めて本塁打を浴びたが、5奪三振と力を見せつけた。

 投げて、打って、まさに森の独り舞台だった。何よりも欲しかった先制点が森のバットから生まれた。2回2死一、三塁。相手投手が打球を当てて治療から戻った直後、森の打球は右翼ポール際のスタンドへ飛び込んだ。

 4回には1死一、三塁で右翼フェンス直撃の二塁打を放って2点追加。この日5打点の暴れっぷりだ。「本塁打は初めてです。出合い頭に当たったんだと思います」と本人もびっくりの高校初本塁打だった。

 マウンドの「本職」は4回を2安打1失点5奪三振。力を抜いて直球は130キロ台後半と抑えめながら、3回までは無安打に抑えた。唯一、力を込めたこの日最速の145キロの直球を4回にスタンドに運ばれ、初本塁打とこの夏初被弾を同時に記録。「本塁打は直球で抑えようと力んで投げてしまった。でも今日は真っすぐもキレていて、変化球もかなりよかった。投げるごとに良くなっています」と森の手応えは十分。2回には球場の球速表示ミスで前代未聞の「170キロ」が表示されるサプライズまで起こった。

 「脱力」に目覚めたのは優勝した4月の「福岡市長杯」だった。決勝の福岡大大濠戦で完封し「力を入れずに投げても抑えられるんだとわかりました」。勝負どころでは力を入れるが、清峰で全国制覇した今村(広島)を参考に、メリハリのある投球を心がける。

 この日は1イニングを右腕の野原総太投手(3年)に任せた。「野原も調子が上がってるので、2人で投げ抜きます」。見えるのは頂点だけ。さらに厳しい戦いを勝ち抜いていく。【前田泰子】