<高校野球秋田大会:秋田商3-1大曲工>◇23日◇準決勝◇こまちスタジアム

 7年ぶり16度目の甲子園出場を狙う秋田商は、4回表の打席で右手人さし指を負傷したエース・近藤卓也(3年)に代わり、緊急登板した阿部勇星投手(3年)が力投。大曲工を6回5安打1失点に抑えた。

 緊急登板の影響など背番号10には全くなかった。エース近藤の後を受け、4回裏からマウンドに上がった秋田商・阿部は「1点でも取ってくれれば抑えられると思っていた」と自信満々の投球を披露した。5回には、佐々木大基遊撃手(3年)を140キロの直球で仕留めて3者連続三振。「今日はストレートの調子がよかった」と速球で押した。

 想定外の事態を乗り切った。4回表無死一塁、送りバントを試みた近藤がバットとボールに右手人さし指を挟まれて出血。太田直監督(33)は「血の量がすごくて無理だ、と思った」と阿部の起用を決断した。エースから「ごめん」とひと言掛けられた右腕は「明日に備えて」と返し、バトンを引き受けた。マウンドでは母明美さん(42)が「勇ましい星のように育ってほしかったので」という「勇星」の名を体現した。1球1球顔を引き締め、長打が出れば同点の9回裏2死一、二塁も右飛で切り抜けた。

 予感はあった。昨夏、昨秋にも死球を受けた近藤に代わって登板する機会があった。いずれも悪い流れを断ち切れなかったが、最後の夏にリベンジした。

 「明日も(近藤を)投げさせることができる」。エースとの約束を果たした。決勝の相手は2年前の同じ舞台で涙をのんだ能代商。「一昨年も去年の秋も負けた相手。絶対に勝ちます」。同じ轍(てつ)を、3度も踏むわけにはいかない。【湯浅知彦】