<高校野球東東京大会:成立学園5-1岩倉>◇27日◇準決勝◇神宮球場

 「グラスゴーの奇跡」に続け!

 東東京大会準決勝で成立学園が岩倉を下し、初の決勝進出を決めた。エース谷岡竜平(2年)が6安打1失点完投。打線も四球や敵失につけこんで、効果的に得点した。ロンドン五輪男子サッカー1次リーグのスペイン戦で、同校OBのFW大津祐樹(22)が決勝ゴールを決めた。この日朝、大津の活躍を知った選手たちは気勢を上げて試合に臨み、3年連続で阻まれていた決勝への壁を見事に打ち破った。

 エースの谷岡は、大きな壁を打ち破った喜びに包まれていた。「ただ、うれしいです」。昨年まで3年連続して準決勝で敗退。4度目の挑戦で初の決勝進出を果たしたナインは、遠く離れた英国から大きな勇気をもらっていた。

 この日の朝、寮の食堂に集まった選手たちに、コーチが大きな声をかけた。「大津が決めてスペインに勝ったぞ」。日本-スペイン戦は前日午後10時すぎのキックオフだったため、早めに就寝していた選手たちは結果を知らなかった。「盛り上がりましたね。かっこいいと思いました」と谷岡。大津の活躍に全員が刺激を受け、「おれたちもやれる」と士気を高めて臨んでいた。

 大津が世界を驚かせたように、今大会の成立学園も周囲をうならせる粘りを発揮している。初戦の3回戦は延長で辛うじて勝ち、4回戦はセンバツ4強の関東一に競り勝った。準々決勝では二松学舎大付に終盤に逆転勝ち。1点差勝ち3試合、2点差勝ち1試合と、しのいでしのいで準決勝まで上がってきていた。

 プロ注目の選手がいるわけでもなく、大砲を擁するわけでもない。ただ、2年生の谷岡が先輩、後輩問わずに「仲間」と表現するよう、上下に隔てなく、まとまりがある。菅沢剛監督(45)が「3年連続準決勝に進出したチームより、力はない」と評したチームは、「試合を重ねるごとに成長している」(同監督)。

 サッカー部は、すでに全国高等学校選手権大会に2回出場しており、甲子園出場のない野球部は差をつけられている。負けていられない。さあ、次は決勝戦。菅沢監督は「大津にあやかりたい」。谷岡は「仲間を信じて、自分たちのプレーをすれば勝てる」。サッカーも野球も個人の力だけでは勝てない。仲間を信じる心が奇跡を生み、勝利をつかむのだ。【茶木哲】

 ◆成立学園

 1925年(大14)創立の私立校。野球部も同年に創部された。生徒数は968人(うち女子428人)。甲子園出場なし。主なOBは、大津祐樹(ボルシアMG)。所在地は北区東十条6の9の13。福田浩平校長。