<高校野球福岡大会:九産大九州2-1糸島>◇10日◇2回戦◇小郡市野球場

 長身アンダースロー右腕がシード校を破った。福岡大会では九産大九州の井手亮太郎投手(3年)が、シード糸島を相手に3安打1失点で完投勝利を挙げた。身長は184センチ。従来はサイドだったが、この春からさらに腕を下げフォームが安定した。すでにプロ8球団が視察に訪れるなど注目のサブマリンが好発進だ。

 184センチの長身なのに、ボールは足元から出てくる。九産大九州のサブマリン井手は丁寧に低めに集め、シードの糸島に3安打しか許さなかった。AKB48篠田麻里子の母校を“下から”倒した。

 ピンチの連続でも落ち着いていた。「走者を背負っても本塁にかえさなければいいと思いました」。2点リードの7回、無死満塁では注文通りの二塁ゴロを打たせた。二塁手がはじいたが、打球は西島藍人遊撃手(3年)の前に転がり、西島が冷静につかんで二塁を踏み一塁へ。併殺の間に1点を失ったが、続く打者も投ゴロに切り抜けた。

 まだ163センチと身長が伸びる前の中学時代、制球力をつけるためにサイドスローに転向した。さらにフォームを固め安定感を出すために、今春からは、より腕の位置を下げ、アンダースローになった。

 「今が(人生で)一番低い位置から投げていますね」。サイドで投げた最速140キロより5キロほど遅くなったが、手元で変化球が曲がるようになった。浮き上がってから沈み、さらに右打者の外角へ逃げていく。クセ球に磨きがかかった。

 個性派右腕に巨人、ソフトバンク、楽天など8球団が興味を示している。アンダースローの西武牧田やロッテ渡辺の身長は177センチ。大柄なのはプロ通算169勝の高橋直樹が183センチだったくらいで珍しい。

 帽子にはベンチ外の3年生からの寄せ書きが書かれている。「この『自分らしく』という言葉が一番好きですね」。自分の力を最大に発揮できる下手投げにたどり着いた井手が、01年以来12年ぶりの聖地へ導く。【石橋隆雄】

 ◆井手亮太郎(いで・りょうたろう)1996年(平8)3月20日、福岡県古賀市生まれ。小野小2年から小野少年野球で軟式を始める。古賀東中では硬式の福岡ライナーズに所属。九産大九州では1年秋からベンチ入り。好きな言葉は「自分らしく」。184センチ、76キロ。右投げ左打ち。