<高校野球愛媛大会:済美7-0今治工>◇23日◇準々決勝◇松山中央公園野球場

 有言実行の154キロだ!

 愛媛大会準々決勝でセンバツ準優勝の済美・安楽(あんらく)智大投手(2年)が、自己最速の154キロをマークした。日米6球団のスカウトの前で、17日の2回戦(帝京五戦)に続いて自己最速を更新。7回を2安打6奪三振で完封し、打っては3打数3安打4打点で、7回コールド勝ちに導いた。

 安楽の速球に坊っちゃんスタジアムがどよめいた。3回2死、9番田村璃久内野手(3年)への4球目。バックスクリーンに「154」の数字が表示された。安楽はそのどよめきに気づき、スピード表示を確認した。「セットからの154キロでうれしかった」。今大会初めて阪神、巨人、中日、ヤクルト、日本ハム、レンジャーズの日米6球団のスカウトが見守る前で自己最速を更新した。

 17日の2回戦、帝京五戦では自己新となる153キロをワインドアップでマークしていた。試合後には「次は154キロを出したい」とも公言していた。有言実行で自己最速を更新。「今までの練習の成果が出てきている」。この夏、数字として表れていることが自信へとつながっている。

 最後の打者に対し、上甲正典監督(66)はベンチから「1、5、5」と、指で155キロを狙うよう指示。安楽もマウンド上でうなずき、ミットを目がけて全力で投じた。2キロ及ばず153キロに終わったが、93球を投げても球威が衰えないことも証明した。以前から155キロを目標に掲げている安楽は「そう簡単に出ないですね。だからこそ目指したい」と、さらなる更新に意欲を見せた。

 球速ばかりが注目されているが、直球だけでは勝てないことも分かっている。「センバツで対戦した相手のピッチャーを見て、変化球で三振を取るところを見た。ストレートだけではダメだと思った」。スライダーを中心に変化球の強化を行った。この日はスライダーに加え、100キロを下回るスローカーブも取り入れた。「田中将大さん(楽天)の投球術が理想。直球も速いけど、カーブを投げるようになって勝てるようになったと聞きました」。すべては直球を生かすため、勝てる投手になるためだ。

 甲子園まであと2勝となった。「甲子園を目指してずっと野球をしていた」。155キロへの挑戦、その向こうに目指す聖地が見えてくる。【宮崎えり子】