<高校野球長野大会:佐久長聖10-9長野商>◇27日◇決勝◇南長野運動公園

 大逆転劇で佐久長聖が2年ぶり6度目の優勝を決めた。2回までに3-8と5点のリードを許したが、2番手で登板した両角(もろずみ)優投手(3年)がスプリットを武器に3~8回を0点に抑える好投。流れを引き寄せると、7回に一挙4点で同点に追いつき、9回に浜竜太郎主将(3年)が勝ち越し打を放って逆転勝ちした。

 浜主将は興奮していた。8-8で迎えた9回1死一塁。「来た球を打とうとしただけ。球種もコースも何も覚えてない。自分のエラーで、自分のミスで点が入った。チャンスで回ってくると信じていた」。無心でフルスイングすると、打球は右中間を真っ二つ。最終回に勝ち越しに成功し、三塁塁上でガッツポーズを繰り出した。

 ミスを取り戻した。2回無死一、三塁、ゴロをさばいた三塁手からの二塁送球をはじき、併殺どころかオールセーフ。一挙6失点の一端を担ってしまった。だが、気持ちは折れなかった。PL学園出身の藤原弘介監督(40)が「浜は1年間、本当にしんどかったと思う」と同情するほど、チーム全体の責任を背負わされてきた。紅白戦でどちらかのチームが1本でも全力疾走を怠れば、監督のカミナリは浜に落ちた。「全員に(方針が)浸透しなければお前の存在価値はない」と叱責(しっせき)され、涙を流したこともあった。チーム一の練習量ながらチーム一の怒られ役。強い心が育まれた。

 逆転劇のお膳立てをしたのは、投のヒーロー両角だ。129球完投した準決勝から連投にもかかわらず、2回途中から119球のロング救援。最速139キロを誇る直球とスプリットを軸に3~5回を3者凡退で片付け、味方の反撃を待った。時に「よっしゃー」と叫びながら打者に立ち向かうなど、気合を前面に出したマウンドさばきで「丁寧にコースを突けた。守備からリズムがつくれた」と胸を張った。

 両角の父速(はやし)さんは東海大陸上競技部駅伝監督で、佐久長聖でも駅伝部を全国区にした陸上界の有名人。兄駿さんも陸上で全国大会に出場している。優は1人だけ好きな野球の道に進んだが、豊富なスタミナと大舞台での強さは両角家のDNA。米国で合宿中の父から試合前に「思い切ってやって来い」とメールで激励されていたが「やっと自分も全国大会へ出られる」と笑顔を見せた。

 佐久長聖は昨夏が長野大会決勝敗退で、一昨年が甲子園初戦敗退。「去年の借りは返せたので、今度は一昨年の借りを返す」と浜主将。2試合連続逆転勝ちの勢いで、甲子園に向かう。【斎藤直樹】

 ◆佐久長聖

 1964年(昭39)創立の私立校。95年に佐久から校名変更。生徒数は913人(うち女子362人)。野球部は64年創部。部員数119人。甲子園出場は春1度、夏は6度目。主なOBに今井裕介(競輪選手)島田秀平(お笑い芸人)ら。所在地は佐久市岩村田951。小林浩校長。◆Vへの足跡◆2回戦9-1田川3回戦7-0須坂東4回戦8-3創造学園準々決勝7-0地球環境準決勝2-1上伊那農決勝10-9長野商