<センバツ高校野球:利府5-4早実>◇3月31日◇準々決勝

 決勝切符をかけて、さあ甲子園史上初の準決勝東北対決だ!

 利府(宮城)が早実(東京)を5-4で破りベスト4進出を決めた。0-2の5回表に、1番遠藤聖拓(3年)の2点二塁打で同点、4番井上基(もとき、3年)の2点打で勝ち越し。エース塚本峻大(3年)が要所を締め、宮城の公立校初の春4強&県勢甲子園通算80勝目を挙げた。

 塚本がマウンド上で跳びはね、ガッツポーズを繰り出した。9回裏、1点差に迫られ、なおも長打を浴びればサヨナラ負けという2死一、三塁のピンチ。ここで踏ん張った。早実の4番森厚太(3年)を遊ゴロに打ち取りゲームセット。伝統校をついに破った。初戦は継投、2回戦はサヨナラ勝ち。甲子園に来て初めてマウンド上で迎えた勝利の味は、格別だった。

 習志野(千葉)に続き、甲子園優勝経験のある関東の伝統校を連破。塚本が2試合連続の完投で抑えきった。カットボール、スクリューなど変化球を巧みにコーナーに散らした。2回に4安打を浴びて2失点。だがその後は5、9回と最少失点にとどめた。「苦しかった。7回あたりから腕が重くなり、9回は腕が上がらなくなった。気持ちも折れそうになった」と素直に振り返った。

 それでも気持ちは折れなかった。バックは「甲子園優勝校に勝ってるんだぞ」と励ました。9回裏のピンチには、伝令の青池隼人(3年)が「延長になってもいい」と声を掛けた。塚本は「みんなのおかげで気が楽になった。投げやりにならず、自分の投球を貫くことができた」と感謝する。

 打線は5回に打者11人、5安打3四死球でビッグイニングをつくった。同点の2点二塁打を放った遠藤主将は「以前は仙台育英や東北に名前負けしていたが、昨秋の県大会で仙台育英に勝ってから、名門にも気後れしない。名前じゃない。内容で勝負です」と胸を張った。

 ナインのスタミナも、大舞台で効力を発揮した。一時、風邪をひく部員が出たが克服した。ほとんどがスポーツ科学科に在籍。ストレッチや睡眠、栄養など、体調管理には万全を期してきた。前夜は酢の物で疲れを取り、この日の朝は、すぐエネルギーになるパスタ、ドリンクゼリーを摂取した。

 いよいよ花巻東との「みちのく対決」。塚本には菊池雄星(3年)との左腕対決が待ち構える。「球のスピードは、かなわない。菊池君の速球に見とれず(笑い)、自分は自分のピッチングをします。ここまで来たら負けられない」と塚本は闘志を見せた。21世紀枠として大会史上初の決勝進出へ-。利府がまた、新たな歴史のページを開く。【北村宏平】