前オリックスの平野佳寿投手が所属するダイヤモンドバックスが、快進撃を続けている。4月終了時点でナ・リーグ20勝一番乗りを果たし、現在西地区首位。今季特に素晴らしいのが投手力で、特に平野を含むブルペン陣は防御率リーグ1位と優秀だ。

 この投手陣を陰でサポートしているのが、球団が今季から導入した加湿装置だという。アリゾナ州フェニックスにあるDバックスの本拠地チェースフィールドは、もともとメジャー30球団の中でも屈指の投手不利な球場とされ、16年にはチーム防御率がリーグ最下位になった。投手受難の大きな要因の1つが高温かつ極度の乾燥で、それによってボールがよく飛ぶといわれてきた。そこで今季から加湿装置を完備した倉庫でボールを保管するようにした。メジャーでは、標高のせいでボールが飛ぶコロラド州デンバーのロッキーズの本拠地クアーズフィールドで02年に加湿装置が導入されており、チェースフィールドでメジャー2球場目になる。

 米野球データサイトのファングラフスによると、チェースフィールドの得点は加湿装置設置後、以前とは目に見えて差が出ているという。ホームゲーム最初の12試合の統計データ比較で、本塁打数が昨季の31から23に、1試合当たりの本塁打数が2・6から1・9に、1試合当たりの得点が12・0から7・2に、打者の平均打球速度が90・3マイルから87・6マイルに、それぞれ減少している。

 まだ少ないサンプルではあるし、偶然ということもあり得るかもしれないが、球団はこの変化は加湿装置によるところが大きいと考えているそうだ。マイク・ヘーゼンGMは以前「湿度は、ボールの握りやすさに影響している。アリゾナは夏の間は特に、暑さと乾燥が尋常ではないから握りづらく、それがパフォーマンスに影響した」と話しており、ボールの加湿イコール投手力の向上と見込んでいた。投手たちも同意見で、先発エースのロビー・レイは「今はボールを握ったときの感覚が、たぶん他球場と同じだと思う。昨年までの加湿していないボールと今年の加湿したボールは、やはり感触が違う」という。

 他球場と比較すると、今季のチェースフィールドでのハードヒット率、打球速度などの打撃データは、昨季からの数値低下がどこよりも大きい。球場が打者有利か否かを示す「パークファクター」のESPNの指標では、チェースフィールドは昨季打者有利さで全30球場中3位だったが、今季は17位と大きく後退しており、ボールを加湿しただけで、これほど変わるものなのかと驚くほどだ。もちろんダイヤモンドバックスは今季、特にリリーフで実績ある投手を新たにそろえたため実力自体も上がっているとは思うが、平野はいいタイミングで入団したといえるのではないだろうか。