勝っているチームというのは、選手たちのムードがやはり格別に良いものだ。

昨季世界一を達成し今季もポストシーズン進出がまず間違いない状況のアストロズがいい例で、最近は誰かが本塁打を打ちダグアウトで喜び合うとき、ハイタッチの代わりにチーム全員で面白パフォーマンスを披露し話題になっている。あるときはダグアウトの真横にあるテレビカメラを選手全員で一斉に凝視するというパフォーマンスをしてみたり、またあるときはカーリングのものまねで全員で床を掃くジェスチャーをしてみたりとユニークなパフォーマンスが多く、チームのまとまりや和気あいあいムードが伝わってくる。

米国では野球チームの「ケミストリー(集団内の人同士の相互作用)」研究が進んでおり、こうしたパフォーマンスは研究者からも注目されている。野球は試合中でもチームの人間関係が見える場面が多い上に、試合の勝ち負けという結果もはっきり出るため、ケミストリーが集団のパフォーマンスにいかに影響を与えるかという研究に、最も適しているとされているようだ。

それらの研究を元に、ケミストリーという漠然とした無形のものを数値化し、指標として使われるようにもなっている。指標の具体的な内容はまだ明らかになっていない部分が多いが、恐らく選手同士でハイタッチをしたり背中をたたいたりする行動、そうした行動時の選手間の距離やフィジカルコンタクトの度合い、回数などが数値化されているのではないかと思う。アストロズのような選手全員のパフォーマンスは、チームの結束を固めるのに役立つとされており、これも指標の1つになっているはずだ。ケミストリー指標が高いチームは勝つというデータもすでに出ているだろう。

もちろん良好なケミストリーは、強いチームだけのものとも限らない。エンゼルスは今季、ポストシーズン進出の可能性がなくなってはいるものの、試合を観ていると選手同士の良好なムードが伝わってくる。ロサンゼルスの地元メディアで知ったのだが、エンゼルスでは最近、ダグアウトで「サークル・ゲーム」をするのが流行っているそうだ。サークル・ゲームとは、Aが自分の腰より下の位置で親指と人さし指でOKマークを作って別の人に見せ、仮にBがそれを見たとしたらBの負けとなり、AがBの肩などにパンチをくらわすという単純な遊び。先日、大谷もそのゲームでOKマークを作っていたところ、ソーシア監督に勘違いされたという笑い話が伝えられていた。

そんな遊びができるのも、チーム内がいい雰囲気であるからこそ。そう考えるとエンゼルスのケミストリーは申しぶんないし、打線も良い。あとは投手力を整備すれば、来季は期待できるのではないだろうか。 【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)