メジャー開幕前のこの時期、必ず話題に上がるのが「今季のカムバック賞は誰か?」ということだ。多くの米メディアが受賞者予想記事を掲載し、ネットフォーラムでは野球ファンが予想で盛り上がる。1965年に創設された長い歴史を持つ賞でもあり、選手がこの賞を目標にシーズンに臨むことも多い。

今季でいえば、パイレーツの姜正浩内野手(31)がそうだ。16年シーズン終了後に母国の韓国で飲酒運転で逮捕されたことで米国ビザが取得できず、17年に完全離脱した。18年はようやく4月にビザを取得できたが、マイナーでの調整が長く続きメジャーに復帰したのは昨年9月28日。今季が3年ぶりのフルシーズンメジャーとなるため、キャンプイン前に「ぜひカムバック賞を取りたい」と意欲的だった。

しかし今季のカムバック賞候補は豪華な顔触れがそろっており、賞争いはかつてないほど厳しいものになるかもしれない。

故障などのためわずか8試合の登板で1勝3敗に終わったカブスのダルビッシュ有投手(32)も、もちろん候補の1人。他には、15年新人王で17年に自己ベストの打率3割超えを果たしたが、昨季故障などで成績を落としたアストロズのカルロス・コレア内野手(24)。15年MVPに輝くも昨季は故障で52試合の出場にとどまり、今季ブレーブスと1年契約を結んだジョシュ・ドナルドソン内野手(33)。ヤンキース移籍後の17年から不調が目立ち今季レッズに移籍した先発右腕ソニー・グレイ投手(29)らも候補だ。

12年3冠王で13年に2年連続MVPに輝いたタイガースのミゲル・カブレラ内野手(35)や、今季エンゼルスと1年契約を結んだ先発右腕マット・ハービー投手(29)は、2年連続で候補に名が挙がっている。

野球のデータサイト「ファングラフス」が過去のカムバック賞を分析し、最も受賞しやすいタイプの選手を割り出している。

それによると、受賞者はかつての成績と同等か、それ以上の成績まで復活しているケースが多いという。また近年のカムバック賞は故障明け復帰選手が圧倒的に多く、05年以降では70%以上。受賞しやすいポジションは先発投手が断トツで、全体の40%近い。また所属しているチームの成績にも影響を受けており、受賞者の約80%は所属チームが勝率5割以上、受賞者の約70%は所属チームがポストシーズン進出争いをするチームだという。

これらの条件を踏まえると、復活したダルビッシュは相当有力な候補になる。このキャンプ中は自身の投球について「人生でベストのボール」と発言しており、周囲の期待も高まるばかり。シーズンが非常に楽しみだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)