コロナ禍で無観客試合を余儀なくされ入場料や販売収入がなくなったMLBは今オフ、FA選手にとって厳しい冬になるといわれている。経費削減を優先する球団が多く、通常なら入場料収入が球界トップのヤンキースやレッドソックスなども大きな補強には動かない見通しだと伝えられている。

だがそんな中でも、積極的に補強に動こうという球団もある。エンゼルス、メッツ、ホワイトソックス、ブルージェイズなどだ。

エンゼルスは今オフ、ビリー・エプラーGM(45)を解任しGMの椅子が空いたままだが、適任者が見つかるまで慎重に人選を行う予定で、新GMの決定は11月26日の感謝祭頃までかかる可能性があるという。だが一方で、チームの戦力補強に関してはアルテ・モレノ・オーナー(74)が直接指示を出すなど経営トップの発言力が大きく、ポストシーズン進出を狙えるチーム作りを目指す方針は、昨季までと変わらない。昨年3月にメジャー史上最高額の12年4億3000万ドルで契約延長したマイク・トラウト外野手(29)が全盛期のうちに何とか世界一を達成したいというチームの悲願もあり、このオフも積極的に補強に動きそうだ。

メッツは、間もなく新オーナーになる見込みのスティーブ・コーエン氏(64)が30球団でNO・1の資産家で、その資金力は桁違い。米経済誌フォーブスによると、コーエン氏の総資産は146億ドル(約1兆6100億円)で、総資産2位のナショナルズのラーナー・オーナーの3倍以上にもなる。オーナーが変われば球団の体制やチーム編成が刷新されるため、コーエン氏が就任と同時に新たなチーム作りに着手するとなれば、その潤沢な資金を今オフからためらわずに投入することになるだろう。

ホワイトソックスは今季地区2位でポストシーズンに進出したが第1ラウンドで敗退し、監督を解任。コアな戦力はそろっているだけに、ポストシーズンでさらに上を目指すために大きな補強を目指すとみられている。ブルージェイズはマーク・シャパイロCEO(53)がシーズン終了後に「資金はある。昨オフと同様に意味のある補強をしたい」と明言した。ア・リーグ同地区のヤンキース、レッドソックスが静かなだけに、勝負をかけるなら今といったところか。

今オフの大物FAには先発右腕トレバー・バウアー(29=レッズ)、J・T・リアルミュート捕手(29=フィリーズ)、マルセル・オズナ外野手(29=ブレーブス)らが名を連ね、田中将大投手(31=ヤンキース)もトップ15位あたりに入っている。MLBは、オフシーズンもストーブリーグの動きが楽しみだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)