エンゼルス大谷翔平投手(27)の受賞ラッシュで、オフシーズンも大谷旋風が続いている。今季のMLBを象徴する「プレーヤー・オブ・ザ・イヤー(年間最優秀選手)」に関しては、選手間投票によるプレーヤーズチョイス・アウォード、ベースボール・アメリカ誌、スポーティング・ニューズ誌、ベースボール・ダイジェスト誌と、ここまでオフシーズン恒例の表彰を総なめ。表彰シーズンのクライマックスともいえる全米記者協会(BBWAA)のMVPも受賞すれば、各賞の最高栄誉5つを全制覇することになる。

そこで、過去にこの5つを全制覇した選手がいるか調べてみた。一番歴史の浅い賞が1998年に始まったプレーヤー・チョイス・アウォードとベースボール・アメリカ誌の表彰であるため、この年以降に5つすべてを同時受賞した選手を調べてみたが、全制覇した選手はかなり希少だ。

例えば2007年はヤンキースのアレックス・ロドリゲス内野手が54本塁打156打点で2冠に輝きBBWAAが選出するMVPをはじめ、プレーヤーズ・チョイス、スポーティング・ニューズ誌、ベースボール・アメリカ誌の各年間最優秀選手に選ばれたが、ベースボール・ダイジェスト誌だけはフィリーズのジミー・ロリンズ内野手を年間最優秀選手に選んだ。打撃タイトルは獲得していないものの得点、三塁打、マルチ安打試合でナ・リーグをリードしたことが選出の理由となった。

2012年と2013年はタイガースのミゲル・カブレラ内野手が2年連続でBBWAAのMVPに輝き、プレーヤーズ・チョイス、ベースボール・ダイジェスト誌、スポーティング・ニューズ誌により2年連続で年間最優秀選手に選ばれたが、ベースボール・アメリカ誌だけはどちらの年もエンゼルスのマイク・トラウト外野手を選出している。カブレラは12年に3冠王、13年に2年連続の首位打者に輝いた一方、トラウトは新人として鮮烈デビューし12年に最多得点と盗塁王で新人王に輝いたことで受賞となった。

こうして全制覇まであと1つという選手は多いものの、23年間で5つすべてを受賞したのは2001年のジャイアンツのバリー・ボンズ外野手と、2017年のアストロズのホセ・アルテューベ内野手の2人だけ。ボンズは01年にシーズン本塁打記録を更新する史上最多の73本塁打を放ち、打率3割2分8厘、137打点をマーク。アルテューベは17年に打率3割4分6厘で2年連続3度目の首位打者に輝き、24本塁打、81打点、32盗塁をマークしチームをけん引した。

しかしボンズはのちに禁止薬物使用のスキャンダル、アルテューベは受賞ラッシュだった17年にチームのサイン盗みスキャンダルが発覚し、どちらも輝かしいはずのシーズンにみそを付けてしまった。そういう意味では大谷の受賞ラッシュは、みんなが心から祝福し長く語り継がれる特別なものになるのではないだろうか。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)