MLBと選手会の労使交渉が難航しスプリングトレーニング開始が遅れる中、それでもフロリダ、アリゾナ両州のキャンプ地では、いつ開始してもいいように準備が整えられているという。
各球団のキャンプ施設がある地元は、キャンプ開催による経済効果でビジネスが成り立っていることがほとんどだ。アリゾナ州で行われるオープン戦「カクタスリーグ」の運営者によると、通常のシーズンならキャンプの経済効果は同リーグだけで6億4400万ドル(約708億円)。コロナ禍だった20年は3億6300万ドル(約399億円)まで落ち込んだそうだが、それだけに今年は収益を元のレベルに戻すことを目指したかったはずだ。しかもカクタスリーグは今年で75周年の節目でもある。
大谷翔平投手(27)が所属するエンゼルスはアリゾナ州テンピ市にキャンプ地を構えており、そこにもやはりキャンプ中の収益に頼る企業や団体が多数ある。大谷が二刀流で大ブレークし注目が高まった今年のキャンプは、大盛況になることが期待されていただけに落胆は大きい。
エンゼルスのオープン戦期間中に球場運営を担っている非営利慈善団体テンピ・ディアブロスは、この6週間で数十万ドル(数千万円)の資金を集め地元子供たちのための育英基金にしているそうだが、ロックアウトで今年はそれが困難な状況になった。球場の運営スタッフはほとんどが定年退職し地元に貢献したいと働いている年配のボランティアで、毎年楽しみにしているスプリングトレーニングが始まらない現状に落胆しているという。
ドジャースは09年、アリゾナ州グレンデール市にホワイトソックスと共同使用の豪華なキャンプ施設をオープンしたが、建設費や修繕・維持費の大部分を同市が負担している。ドジャースが市に支払っている年間の施設リース料は何と、わずか1ドル(約110円)だという。それでも十分に採算が取れるだけの莫大(ばくだい)な経済効果が見込まれているというわけだ。しかしこのロックアウトによる損失は大きく、ロサンゼルス・タイムズ電子版は「市は怒っている」と伝えている。
選手にとってもロックアウト継続は、球団のキャンプ施設を使用できない状態が続き、トレーニング場所の確保が必要になる。スプリングトレーニングが短縮されれば、投手は特にオープン戦で十分に調整登板ができずにシーズンに入ることによるケガのリスクが心配だ。
ファンにとっても、長く続くオーナー側と選手会の交渉難航には失望しかない。誰も得をしないロックアウトが、早く明けることを望む。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)




