8月上旬のトレード期限前にエンゼルス大谷翔平投手(28)がトレードされるか注目されたが、獲得に本腰を入れていたと伝えられた球団の中で、サプライズだったのがホワイトソックスだ。トレード期限直前にニューヨーク・ポスト紙が「ヤンキース、パドレス、ホワイトソックスが獲得しようと動いている」と伝えていた。他の2球団はそれ以前から名前が挙がっていたが、ホワイトソックスは突然名前が出てきた予想外の球団だった。

しかし実際のところどうだったのか。シカゴの地元でもサプライズだったのかどうか、現地のベテラン野球記者に聞いてみた。

まずシカゴ・トリビューン紙で20年近くMLBの取材を続けているマーク・ゴンザレス記者。「ホワイトソックスは昔から、大物選手の獲得に動くだけは動いてきたんだよ。ケン・グリフィー・ジュニアが獲得可能になったときも、ランディ・ジョンソンがそうだったときも、獲得に動いた」。なるほど、地元記者にしてみると、そこまでサプライズではなかったようだ。しかし同記者は「オオタニをトレードで獲得するにしても契約延長が条件になると思うけど、ホワイトソックスは彼と契約できるほど総年俸に余裕がない。実際問題、球団が彼を獲得するかどうかといったら、まったくノーチャンスだね」とばっさり。

シカゴ・デーリーヘラルド紙の大ベテランでホワイトソックス番を務めるスコット・グレゴア記者も「あのトレード情報は、話半分以下程度に受け止めている。だいたいホワイトソックスのファームシステムはひどい。30球団中ワーストで、有望株選手のランキング全体100位位内に1人も入っていない。オオタニと交換できる選手がいないからね」と分析した。全米メディアの騒ぎをよそに、地元では意外と冷めた見方をしていたようだ。ただしゴンザレス記者は「もし彼を獲得できるなら、もちろんほしい。ホワイトソックスには左打者がいないし、同時にトップクラスの投手が加わることになるのだから最高だ」とも。夢は見たいが現実的には諦めムードといったところだろうか。

大谷のトレード話については、今オフもまだ可能性が残っている。先日、パドレスのA・J・プレラーGMがラジオ番組で「オオタニをトレードでどうやって獲得するか、球団フロント内の会議でかんかんがくがくの大議論が行われ、大いに盛り上がった」と明かしていたが、それだけ本気で獲得を目指したということ。1度本気になった球団は、そう簡単には諦めないのが常だ。オフも話題が再燃し、また大いに注目を集めそうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)