昨季までメッツの監督を務めたバック・ショーウォルター氏(67)がポッドキャストでMLBにおける昨今の「負荷管理」の実情について語っていたのだが、それが実に興味深かった。普通なら調子のいい選手を継続して起用するものだと思うが、今は選手の負荷管理が重視されるようになり逆の現象が起こっているという。

同氏は人気ポッドキャスト「ファウルテリトリー」にゲスト出演した際、メッツでの経験をこう話していた。「1人の選手が三塁打1本と二塁打2本を放ったときがあったが、そうするとフロントからチェックが入る。彼は塁間を走りすぎたから1日休みが必要だろうと言ってくるんだ。私は、本人に何て言えばいいわけ? 次の日も試合に出たかったら、もうそんなに打つなと言えばいいのか、と聞いたよ」

その選手とは、守備の名手で打撃でも活躍している生え抜きのブランドン・ニモ外野手(30)だった。「昨日打ち過ぎたから今日は試合に出られないよと、ニモに言わなければならない状況になった」という。監督としては調子のいい選手を起用し続けたいわけで「納得できない」と話していた。

そこで思い出したのが、メッツで昨季メジャー1年目を戦った千賀滉大投手(31)のことだ。夏ごろに取材に行ったとき、次の登板予定が球団からなかなか発表されなかった。ショーウォルター監督は「状態を確認して次の登板を決める」としており、直前になっても発表なし。先発ローテの順番から予想して、おそらくこの日に投げるだろうと見当をつけることはできるので、そのつもりで球場に行くと「登板予定日」の当日になってようやく球団広報から「千賀の登板は2日後」と発表があった。

登板日がなかなか発表できないのも、慎重に選手の負荷管理をしている表れなのかと思う。ニモの件からも、メッツが負荷管理に気を使っていたのは明らかだ。ハイテク技術の進歩で選手の疲労度計測もデータなどで細かく管理できる昨今、NBAなどでは行きすぎた負荷管理が議論を呼んでいるそうだが、MLBでも同じような状況になりつつあるのかもしれない。

ところで、MLBで一番負荷がかかるであろう選手といえば、投打の二刀流でプレーするドジャース大谷翔平投手(29)だろう。エンゼルスでは試合出場は大谷自身の意思に任されていた感が強かったが、設備がそろいデータ分析部門の規模も大きいドジャースでは負荷管理の意識も高いと思う。右肘手術をしたため今季はDH専念となるが、投手として復帰する来季以降はどんな起用法になるのか気になるところだ。