長く、厳しい公式戦を戦い抜くうえで、重要な要素はたくさんあるのでしょうが、そのひとつとして「ベテランの存在」は欠かせないのではないでしょうか。純粋な戦力としてだけでなく、若手に優しくアドバイスをすることもあれば、時には小言を言う「お目付け役」であったり…。だからといって、胸に「C」マークを付けて、キャプテンを名乗る必要もありません。ただ、強いチームには、必ずと言っていいほど、実績を持ちつつも、渋く、味のあるベテランがいるものです。

 開幕以来、ア・リーグ西地区で首位を快走するアストロズは、まさにその典型のようなチームです。過去数年来、大胆な世代交代を進め、アルチューベ、コレア、スプリンガーらが中心選手として台頭してきました。それでも、昨季は手の付けられないような爆発力を発揮する一方で、戦いぶりが安定せず、最終的に地区3位に終わり、プレーオフ進出を逃しました。ある意味で、若さと脆さが同居していたのかもしれません。

 そこで、ア軍首脳は、オフ期間、ベテラン選手の補強に専念しました。メジャー20年目の強打カルロス・ベルトラン外野手(40)をはじめ、ブライアン・マキャン捕手(33)、青木宣親外野手(35)、ジョシュ・レディック外野手(30)と、実績、経験とも豊かな選手を次々と獲得しました。コレアら若手が、今後の「チームの顔」として大成していくためにも、生きた教材は不可欠というわけです。実際、今季のアストロズは、試合に大勝してもはしゃぎすぎず、大敗しても落ち着いています。そんなチーム状況に、AJ・ヒンチ監督も確かな手応えを感じ取っているようです。「ここ数年、チームを作っていく中でも、毎年違う。ただ、今年のチームは、とてもエネルギーに満ちているんだ」。

 ア・リーグ東地区で好スタートを切ったヤンキースにしても、若手とベテランの融合が、新たな勢いを生んでいます。サンチェス、ジャッジらの若手野手が台頭したことで、チーム内のバランスが良化したわけです。さらに、オフにはメジャー14年目のマット・ホリデー外野手(37)を獲得。ジーター引退後、リーダー不在と言われたヤ軍でけん引役を務めています。ジラルディ監督が「若手がベテランを刺激し、ベテランも奮起する。チームとしてすばらしいこと。ホリデーは我々のチームの大きな部分を占めている」と話すように、ベテランと若手の「化学反応」が、勢いやパワーを導き出しているようです。

 大変無責任ですが、アストロズ、ヤンキースの今季の最終成績がどうなっているかは不明です。ただ、年代層の偏ったチームは、どうしても安定感を欠く傾向があります。どのチームがペナントを制するにしても、ベテランと若手のバランスの良さは欠かせないような気がします。