メジャーが開幕して1カ月あまり。久しぶりに自宅へ戻ったところ、かなりの時間差ながら、日本から過去数日間分の本紙が届いていました。今や、インターネット上で、瞬時に最新情報が駆けめぐる時代。数日遅れの新聞の「鮮度」は落ちているのですが、5月8日付の本紙を広げた瞬間、米国生まれの娘(14歳)が、奇声を発しました。

 「これって、大谷クーン? 信じられな~い。こんなかわいい顔をして試合で投げてるの?」。

 長年、野球取材を生業にしてきた家庭で育ちながらも、これまで野球への興味は皆無でした。米国のポップスをはじめ、日本のジャニーズ、Kポップなどがお気に入りだったようですが、イケメンの「大谷クン」だけは別格のようです。

 確かに、当日付の弊紙1面の写真(本紙・菅敏カメラマン撮影)を見た瞬間、不思議な感じがしました。通常、野球選手のプレー写真といえば、投手であればリリースの瞬間、打者であればインパクトの瞬間など、歯を食いしばったり、必死の形相を見せているものが大半です。悲壮感が漂うことも珍しくありません。ところが、大谷の場合、時速100マイル(約161キロ)の快速球を投げるにもかかわらず、あどけなさを感じさせるほど、ピュアな表情でした。現実的には、常に結果を求められるメジャー1年目。ただ、大谷が打者に対する目線は、必死でも、悲壮でもなく、ただ、純朴な野球少年が投げているかのように写っていました。

 日米を通して、大谷の活躍は異例の「二刀流」として騒がれています。ただ、大谷自身は、自分のやりたいことを、素直にやり続けているだけなのかもしれません。プレッシャーを感じる以上に、挑戦することを楽しんでいるとすれば、そんな大谷の姿勢が周囲にも伝わっているような気がします。

 これまで野球には見向きもしなかった娘も、「大谷クン」だけは、心から応援したいそうです。

 「あんな表情でプレーしている選手は見たことがないし、メチャメチャかわいい~。野球をやってなくても、モデルになれるよ」。

 ミーハー娘の戯れ言はともかく、大谷クンの「二刀流」の挑戦が、新たなファン層を拡大していることも間違いなさそうです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「メジャー徒然日記」)