東京オリンピック(五輪)まで「あと2年」を切り、日本球界では稲葉ジャパンのメンバー構成や今後の強化策に注目が集まっています。エースとして巨人菅野、ソフトバンク千賀ら実力者の名前が挙がり、リーダー格として巨人坂本、DeNA筒香らが期待されるなど、悲願の金メダル獲得へ向けて、日本中のファンがサポートする雰囲気に包まれています。

 その一方で、米国の球界内で東京五輪の話題があがることはめったにありません。ひょっとすると、野球が五輪種目として復活することすら、さほど知られていないかもしれません。

 というのも、すでにMLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏は、現役メジャーリーガーの五輪参加に否定的な見解を示しており、これまでと同じようにマイナー選手を中心にエントリーする方針を固めています。

 「五輪にトップクラスの選手を参加させるため、中断期間を設けるというのは想像できない」。

 五輪が開催される7~8月といえば、メジャーの公式戦が中盤戦に入る大事な時期です。ポストシーズン進出を目指すチームが、トレード期限の7月31日まで大胆な補強を進めるなど、優勝争いを左右する期間でもあるため、公式戦を中断させるプランを受け入れるつもりは毛頭ありません。

 MLBといえば、米国以外で公式戦を開催し、野球人口の底辺拡大、普及を積極的に進めています。また、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を主催、運営するなど、確かに野球の国際化のために中心的な役割を果たしています。

 もっとも、米国野球界は、こと五輪に関しては、ほとんど興味、関心を持っていません。プロ選手の出場が認められた2000年のシドニー五輪で金メダルを獲得しましたが、若手やマイナー選手が中心だったこともあり、その「偉業」も、さほど認知されていません。米国球界の中心は、あくまでもメジャーの公式戦とワールドシリーズ。金メダルよりもチャンピオンリングを重要視するスタンスは、動かしがたいものがあります。

 もちろん、将来的に米国球界が五輪参加に積極的な姿勢を見せるようになる可能性はあります。ただ、そのためには、公式戦を中断させるだけの価値、ハッキリ言ってしまえば、商業的な「うま味」が必要になるでしょう。野球先進国とはいえ、ビジネスライクな視点は極めてシビアです。

 国の威信をかけ、少年少女に夢を届けるため--と、熱い思いを語る日本球界関係者の純粋さに、本物の「野球愛」を感じる方も多いのではないでしょうか。