やはり、あの快進撃は「春の珍事」だったのでしょうか…。

2001年以来、プレーオフとは無縁のマリナーズが、今季、米球界の辛口コメンテーターを沈黙させるロケットスタートを切りました。日本開幕戦で連勝したところまではともかく、米国でも昨季世界一のレッドソックスに3勝1敗と勝ち越すなど連戦連勝。開幕15試合終了時で13勝2敗の貯金「11」と、完全に下馬評を覆すほど、白星を重ねました。イチローが引退したとはいえ、今季からは菊池雄星が新加入。久しぶりに期待感を膨らませていた日本のマリナーズファンも少なくなかったのではないでしょうか。

ところが…。

4月中旬以降は、まさに下り坂を転がり落ちるかのように、なかなか勝てなくなりました。その結果、2度の6連敗などで、みるみるうちに貯金は目減りし、5月10日には、ついに借金生活に突入してしまいました。

そもそも、今季のマリナーズは抜本的な「チーム再建」を掲げてスタートしました。昨オフ、大砲ネルソン・クルーズがFA退団したのをはじめ、主軸のロビンソン・カノ、先発左腕ジェームス・パクストン、セーブ王のエドウィン・ディアズらを続々とトレードで放出。新エースとなった左腕マルコ・ゴンザレスに菊池らを加え、積極的に若手への世代交代を進めてきました。

それだけに、スコット・サービス監督は、たとえ惨敗しても「我々は学んでいる途中だ」「いい方向に向かっている」など、常に前向きな姿勢を崩すことはありません。特に、メジャー1年目から順調に適応している菊池に対しては、「彼はいつも宿題をやってくる。とても勉強家だ」と、着実な成長ぶりを高く評価しています。フロント陣としては、来季以降、プレーオフを勝ち抜けるチーム作りを目指しており、目先の結果に固執しているわけではありません。

とはいえ、常に勝利を目指す姿勢は変わらないはずです。45試合を消化した5月14日現在、リーグトップの83本塁打をマークしている一方で、437三振、47失策はワースト。防御率は21位の4・84と、弱点、改善すべき点はハッキリしています。

公式戦は、まだ100試合以上残っています。

菊池の勝ち星も気になりますが、シーズン終盤まで緊張感のある試合にするためにも、マリナーズにとっては、これから夏場までが踏ん張りどころになりそうです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)