日本の高校野球で大船渡の佐々木朗希投手が連投を避け、岩手県大会決勝での登板を回避したことは、米国球界でも話題になりました。日本では賛否さまざまのようですが、米国で先発投手の連投は、ほぼ100%の確率で「クレイジー」と一刀両断されます。日本人メジャーの間でも、カブスのダルビッシュ有投手がSNSを通して「佐々木君の未来を守ったのは勇気ある行動」とコメントするなど、高校野球の在り方について、いろいろな意見が聞こえてきました。

その一方で、球界大物OBが「登板させるべき」「ケガが怖かったら、スポーツは、やめた方がいい」などの発言をしたことに対し、ダルビッシュが反論。SNS上に多くのファンから賛同の声などがあがり始め、ちょっとした騒動になりました。その後も、少しばかりやりとりが続き、何となく「感情論」のような印象にも見受けられましたが、ダルビッシュはあらためて自らのツイッターで、本当の狙いを明かしました。

「ずっと停滞していた日本球界を変えていくには勉強し、今までのことに疑問を感じ、新しいことを取り入れていく。その中で議論というのは外せないツール。それを黙って仕事しろとはまさに日本球界の成長を止めてきた原因って気づけないのかな?」。

時代の移り変わりによって、野球界の常識や習慣、トレーニング方法など多岐にわたって変わってきています。ただ、現在に至るまで日本球界を育み、歴史と伝統を積み重ねてきた背景に、先人たちの活躍、貢献があったことは、いまさら言うまでもありません。ダルビッシュが声をあげているのは、何も古い体質のすべてを否定するためではないはずです。旧態依然として残っている「負」の要素について考え直す必要がある時期に来ているからこそ、世代を問わず、議論を交わすべきだと訴えているような気がします。「みんなで野球を変えていく」のハッシュタグを付けて広く意見を求めているのも、その表れでしょう。

今回は、佐々木の登板回避がきっかけとなって話題が広がりましたが、連投や球数問題だけでなく、選手の年金問題や田沢ルールの再考など、球界全体で議論すべきテーマは少なくないはずです。

一部には「選手はプレーに集中すべき」などの意見があるかもしれませんが、現役選手の言葉は、時に評論家やメディアとは比較にならないほど説得力を持つことがあります。ダルビッシュに限らず、選手をはじめ球界関係者が常に活発な意見交換ができるような、風通しのいい球界にすることが、変革への第1歩ではないでしょうか。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)