ドジャースとレイズの顔合わせとなった今季のワールドシリーズは、連日、熱戦を繰り広げています。今回は、新型コロナウイルス対策のため、中立地のテキサス州アーリントンにあるグローブライフフィールドで行われていますが、この中立地開催を今後も継続する可能性が話題に上がっています。

これまでに、ワールドシリーズの1カ所開催を提案していたのが、有力代理人として有名なスコット・ボラス氏です。同氏は数年前から球界の改革案のひとつとして、ワールドシリーズの「スーパーボウル化」を訴えてきました。つまり、プレーオフの結果にかかわらず、事前にワールドシリーズの開催地を選定。全7試合を行うだけでなく、「ワールドシリーズウイーク」として関連イベントなどを企画することで、ビジネスとしても巨額の利益を生むことが可能と試算しているからです。その場合、野球界だけでなく、開催地のホテルなど商業施設や公共事業のインフラ整備が進み、地元経済界にも波及効果が見込めることもあり、ある意味で説得力のあるものでした。

その一方で、ワールドシリーズは夢の舞台ですから、本拠地開催にこだわる声も聞こえてきます。今回は約1万人の有観客で開催され、熱心な両軍ファンの姿も見られますが、やはり超満員のスタンドには遠く及びません。レイズのキャッシュ監督は「ホームでプレーできないのは残念。ホームの雰囲気は、やっぱり特別なものだから」と、中立地開催には否定的な考えを明かしています。

もし、中立地開催となったとしても、現行の日程であれば、組み合わせが決まるのは両リーグの優勝決定シリーズ終了時で、第7戦までもつれ込むと、ワールドシリーズ開催の2日前ということになります。となれば、たとえ熱狂的な地元ファンでも、現地へ移動して観戦することは、そう簡単ではありません。スーパーボウルの場合、2週間の猶予はありますが、飛行機代、チケット代とも、毎年プラチナペーパーに高騰することで知られています。

確かに、ボラス氏が主張するように、ビジネス面ではかなり魅力的なイベントになるでしょう。ただ、例えば、フロリダ州マイアミで「パドレス-ブルージェイズ」、アリゾナ州フェニックスで「ブレーブス-ツインズ」のような遠隔地同士の組み合わせが実現するとすれば、それぞれの地元ファンは喜ぶでしょうか。

ちなみに、過去54回実施されたスーパーボウルに、開催地の地元チームが出場したケースは一度もなく、NFLの七不思議のひとつと言われています。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)