米男子ゴルフのマスターズで松山英樹選手(29=LEXUS)が優勝を決めた際、キャディーを務めた早藤将太さんが、最終18番ホールでピンを戻した後、コースに一礼したことが、世界中で絶賛されています。礼儀を重んじる日本のスポーツ界では、競技にかかわらず、会場や競技場に出入りする際、選手らが帽子を取って一礼する行為はよく見かける光景ですが、他国のファンからすれば、めったにお目にかからないシーンだったのでしょう。

その松山が、若者に影響を与える日本人アスリートとして、ダルビッシュ有、前田健太、大谷翔平と、メジャーリーガー3人の名前を挙げたことも、同時に話題を集めました。

彼らメジャーリーガーが時折のぞかせる日本人らしさも、これまでに注目されたことがあります。

レンジャーズ時代、マウンドに上がったダルビッシュが、周辺に落ちていた紙きれを拾ったことが、現地では大きく取り上げられました。ヤンキース時代の田中将大も、ほぼ同じような行動を取り、地元ニューヨークのメディアで報じられました。ドジャース時代の前田健太の場合、先発した試合のイニング間に、ダッグアウト内で紙コップなどごみ拾いをしていたことが注目されました。

4月13日の「ロイヤルズ-エンゼルス戦」では、大谷翔平がファウルチップを打った際、打球が当たったペレス捕手に「Sorry(ごめんなさい)」と謝罪した声がテレビ中継で流れ、その礼儀正しさが称賛されました。

いずれの言動も、日本球界では、よく見かける光景です。各日本人メジャーリーガーにとっても、ごく自然で、おそらく、さりげなく取った行動だったでしょう。ただ、そのような習慣のない欧米人にとっては、プレー中のアスリートが取る行為としては考えられないというわけです。

2018年のサッカーW杯の際には、日本のサポーターたちが、試合後のスタンドでごみ拾いをしたことが、世界中で話題を集めました。

コースへの一礼も、ゴミ拾いも、その行為というだけでなく、その根底にある感謝やリスペクトの気持ちが、他国の人の心を打つのでしょう。

長引くコロナ禍で、世界中の人々の心がすさみがちになり、SNS上などには、他人への無責任な誹謗(ひぼう)中傷の言葉があふれています。

そんな中、日本人の美徳を思い起こしてくれる光景に、久しぶりに心が洗われるようで、あらためてスポーツの持つ力を再認識した気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)