メジャー2年目のレッズ秋山翔吾外野手(33)が、黙々と奮闘しています。

もしも…の想定ですが、秋山が今も日本でプレーしていれば、おそらく侍ジャパンの主軸として、東京五輪で金メダルを手にしていたはずです。そんな秋山でさえ、今春のキャンプ中に故障し、開幕時に出遅れたことで、昨季ほぼ手中にしていたはずの定位置は、離脱している間に、他選手の手に渡っていました。

西武時代から、日本を代表するヒットマンとして知られた秋山にすれば、無論、望むべき状況ではないでしょうし、納得するつもりもないでしょう。だからといって、うつむいていても、前には進めません。米移籍以来、常に危機意識を持ち続けてきた秋山は、緊急出場した15日(日本時間16日)のフィリーズ戦後、あらためて自らと向き合うかのように、率直な心境を明かしました。

「毎日試合に出たいという気持ちはもちろん持ってますけど、今の状況でプレーオフに出られるという中で、フォーメーションを首脳陣が組んでいるので。そこで行けと言われた時に行ける準備だけはしておいて、練習とかはスタメンだから控えだからということはなるべく変えずに、同じような準備をして、常に声をかけられてもベストのプレーをできるような気持ちでいます」。

5月7日に戦列復帰して以来、ここまでスタメン出場は27試合。代打、守備固めの途中出場など、プレー機会は不規則な状況が続いています。もっとも、メジャーの場合、162試合の長丁場で、しかも大陸横断移動を挟んだうえでの連戦続きですから、不慮の故障者も出れば、全選手に休養も必要です。たとえ、秋山が不動のレギュラーだとしても、全試合でフル出場することは困難です。裏を返せば、ベンチ入り26選手の誰がスタメンで出場しても、戦力が落ちないチームが、ポストシーズンを勝ち抜けるチームとも言えます。

「(個人的に)トータルの数字を見れば目を覆いたくなるような、打撃に関してはという感じですね。その場その場で、ベストを尽くしているつもりですけど…。つもりというのは自分の中で処理すべき問題。明日の出場機会は分からないし、その時その時でしっかり準備をしたうえで、ベストを尽くし続ける、最後まで。きれいごとっぽく聞こえるかもしれないですけど、これが今の自分の心境ですかね」。

日本人としてのひいき目を抜きにしても、たとえ秋山がスタメンでなくても、ポストシーズン争いに加わっているレッズ野手陣の層の高さは、間違いなく、メジャー屈指です。

「(試合に)出た時に自分の結果を出すことがチームのプラスになれば、それは勝ちにつながっていくと思います」。

世代交代がめまぐるしく、常に新陳代謝を繰り返すのが、メジャーの現実。少しでもスキがあれば、すぐに立ち位置が危うくなるだけに、「その時のベストを尽くし続ける」との心境にいたったのは本音なのでしょう。メジャーのレベルの高さを再認識している秋山の言葉は、きれいごとには聞こえません。【四竈衛】

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)