長らく低迷していたマリナーズが、公式戦の佳境に入り、プレーオフ進出へ向けて最大の正念場を迎えています。なにしろ、イチロー、佐々木主浩(敬称略)らが中軸となってメジャー最多記録の年間116勝を挙げた2001年以来、ポストシーズンから遠ざかっており、この20年間の「空白」は、MLBで最も長い期間になっているだけに、当然、力も入るはずです。

過去数年間は、中盤戦までに優勝争いから大きく脱落し、暑いはずの8月に「シアトルでは秋風が吹く」と、からかいの言葉が聞こえてくるほどでした。ところが、今年は9月に入っても貯金を着々と積み重ねて浮上。スコット・サービス監督が「このチームはおもしろい。もし我々の試合を楽しめない人がいるとすれば、野球ファンじゃないだろう」と胸を張るほどで、久しぶりにチーム全体が活気に包まれています。

マリナーズにとって、今年は3年前から飛躍のシーズンとして位置付けられていました。高年俸のベテラン選手を放出するなど大胆な世代交代とチーム改革を進め、計画的に「2021年にプレーオフを争えるチーム作り」を進めてきました。大枚をはたいてFAで大物選手を獲得するのではなく、若手有望株をマイナーで着実に育成したり、他球団で活躍の場が少ない選手を再生するなど、いわば「身の丈」に合った方法で、上位争いに食い込んできたわけです。

24日(日本時間25日)のエンゼルス戦で大谷翔平投手に2敬遠を含む4四球で歩かせた際、エンゼルスタジアムではブーイングが起こりました。その一方で、「2021年は特別なシーズン」と言い切るサービス監督にすれば、勝つためには当然の策でした。

大敗した25日、連勝は「6」でストップしましたが、最後まで落とせない戦いは続きます。同監督は常々、「我々はこれからも学習し続け、成長を続けていく」と、緊張感のある試合経験が、将来的なチームの底上げ、強化につながると力説しています。

残り1週間。結果はどう転ぶかどうか分かりませんが、新生マリナーズが着実に実力を蓄え、来季以降、優勝争いに加わる可能性は高そうです。

22日、アスレチックス戦で13勝目を挙げたフレクセン(ロイター)
22日、アスレチックス戦で13勝目を挙げたフレクセン(ロイター)