2021年のワールドシリーズ「アストロズ-ブレーブス」が、いよいよ26日(日本時間27日午前9時9分)からスタートします。過去5年間で3回目の出場となるアストロズは、今やポストシーズンの常連となった強豪ですが、今回のワールドシリーズは、これまでと違った空気の中で戦うことになりそうです。

2017年、球団初の世界一に輝き、19年もワールドシリーズ(ナショナルズに敗退)に進出したアストロズは、19年オフ、過去のサイン盗みスキャンダルが発覚し、大騒動を巻き起こしました。その後、当時のルーノーGM、AJ・ヒンチ監督(現タイガース監督)をはじめ、深く関与していたベンチコーチのアレックス・コーラ(現レッドソックス監督)らが職務停止処分を受けるなど、球界全体を揺るがす大事件となりました。

コロナ禍の昨季はポストシーズンの一部を除き無観客で試合が行われましたが、今季は徐々に有観客となったこともあり、アストロズナインはニューヨークなど敵地を訪れるたびに、厳しいヤジやブーイングを浴びながらプレーすることになりました。それでも、今季は独走で地区優勝を決め、大舞台に駒を進めてきました。

今回は、本当の底力を見せて、過去の汚点を拭い去る絶好の機会とも言われています。それでも、「汚名返上」を口にする選手はいません。主軸のカルロス・コレア遊撃手は、「周囲からの雑音がモチベーションになるとはまったく思わない。我々は毎日良くなることをモチベーションにしているし、それがフィールドでの結果に出ている」と、シリーズへの決意を口にしています。

スキャンダル後、チーム再建を託された2年目のダスティー・ベーカー監督も、過去の事件と今回のシリーズを関連付けようとはしていません。

「人はそうしたがるかもしれないが、それがモチベーションの主な要因だとは思わない。我々は、この場にいたいからいるし、試合でプレーするだけ。野球を愛し、勝利を愛するから。彼らも勝ちたいし、私も人生すべてにおいて勝ちたい」

今季1年間は、トミー・ジョン手術を受けたエースのジャスティン・バーランダー投手を欠きながら勝ち上がってきたように、そもそも総合力はメジャー屈指です。

アストロズが4年ぶりに世界一リングをつかめば、果たして、米国の野球ファンは「みそぎ」が終わったと認めるのでしょうか。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)