メジャーが開幕して約1カ月あまり。エンゼルスが、快調に白星を重ね、米時間5月14日終了時点で23勝13敗と、ア・リーグ西地区で首位争いに加わっています。昨季は「二刀流」の大谷翔平がMVPに選出される大活躍を見せましたが、チームは77勝85敗と優勝争いから脱落し、地区4位。今季はトラウト、レンドンら主軸が完全復帰するとはいえ、開幕前の大方の予想では、「勝率5割前後」で苦戦は免れないものとみられていました。

今季のエンゼルスは、大谷をはじめ、トラウト、ウォードら中軸が得点源となり、49本塁打(リーグトップタイ)、180得点(同1位)、打率2割4分6厘(同2位)と、厚みのある攻撃を見せています。その一方で、最大の難点とみられていた投手陣も、防御率3・22(同3位)と健闘しており、投打のバランスがいい状態で戦っています(成績はいずれも米時間5月14日時点)。

ただ、長打だけに頼っているわけではありません。たとえば、1日のホワイトソックス戦のことです。1-0と1点リードした3回無死二、三塁から、3番大谷は外角へのシンカーを、やや強引に引っ張って二ゴロ。貴重な追加点を挙げ、二塁走者は三塁に進みました。この場合、言うまでもなく、ベストの結果は本塁打などの安打です。「最低限の仕事」として犠飛が挙げられるかもしれませんが、左中間方向への飛球だった場合、二塁走者がタッチアップできるとも限りません。大谷が転がした二ゴロは、打点と進塁打を兼ねた「最高の凡打」でした。結果的に、その後、1死三塁から犠飛でさらに1点を追加。試合の主導権を握りました。

この一打は、ほんの一例ですが、今季のエンゼルスは、常に「インプレー」にすることを心掛け、「つなぐ」意識が少しずつ浸透しているようにも見えます。今春のキャンプ中、世界一となった02年との違いについて、マドン監督はしみじみと話していました。「当時は、とても健全だった。今、我々はそのようにしたい。最近は、私が賛同できない、多くのことが浸透している」。スーパースターこそ不在ながら頂点まで駆け上った02年は、本塁打に依存せず、相手が嫌がる野球で戦い抜きました。

今季のマドン監督は、接戦の中盤に犠打のサインを出すことも珍しくありません。4月15日のレンジャーズ戦では、満塁のピンチに申告敬遠を指示。奇策として話題を集めましたが、データに頼り過ぎることなく、名将が自在にタクトを振った采配に、昨季までとの違いが表れていたような気もします。

大谷自身も、着実にチームの充実度を感じ取っています。「いい投手が出てきてもいけるような雰囲気があるのが今年、違うところじゃないかなと。去年までだと、なかなかそういう雰囲気にならなかったですけど、そこはチームとしてすごくいいところじゃないかなと思います」。長丁場の公式戦。このまま、すべてが順調に進むとは限りませんが、ポストシーズン未経験の大谷には、シーズンの最後までしびれる戦いを続けてほしいものです。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)