メジャーでは、来季から投手の投球間隔を制限する「ピッチ・クロック」を導入する方向で調整を進めています。観客動員数が伸び悩んでいる事情もあり、幅広くファン層を拡大する目的で、機構側は試合時間短縮に躍起になっています。現段階では、マイナーの各レベルで複数パターンをテスト。現場の反応やデータを収集している状況ですが、ロブ・マンフレッド・コミッショナーは「試合のペースは、我々のファンのためにもとても重要な問題」と、あらためて導入への意欲をみせています。

たとえば今季、3Aの「ピッチクロック」は、投手が球を受け取ってから投球動作に入るまでの時間を走者なしで14秒、走者ありで19秒に設定されています。その一方で、打者には前打者のプレー終了後30秒以内に打席で構えることが定められており、投手が違反すると「1ボール」、打者が超過すると「1ストライク」が、それぞれ自動的にカウントされます。そして投手のプレートを外す動作、けん制球は計2回、打者の「タイム」は1回までと規制されています。

「ピッチクロック」は15年からマイナーの各レベルで実験的に導入されてきましたが、これまでは際立った成果は表れていませんでした。ただ、今季は異なる結果が見え始めています。開幕当初の2週間はまず「ピッチクロックなし」でプレー。1試合の平均時間は2時間59分でした。ところが、細部の規制を強化した上で導入を開始した4月15日以降は2時間35分と、大幅に短縮されたことが報告されています。

野球の試合は時間に制限されることがないため、駆け引きを含めた「間」が大事な競技といわれます。実際、投手がプレートを外したり、けん制球を何度も投げたり、打者が打席を外すのも、意図的なケースが多く見られます。サイン盗み防止のため、バッテリー間のサイン交換が複雑化していることもあり、導入に反対する意見も聞こえてきます。「ピッチクロック」に限らず、野球のすべてがデジタル化されていくことに違和感を覚える世代がいることも事実でしょう。

その一方で、久しぶりにマイナーの試合を見ると、投手のテンポの良さ、スピーディーな試合展開は、かなり新鮮でした。あまりの速さにスコアブックをつけるペンの動きを、メジャー取材時よりも速めたほどです。ただ、デジタル機器の操作は手動で行われるため、担当者によって誤差が生じるなど、クリアすべき課題も残っています。

理想をいえば、規制せずとも、試合時間が短縮されることでしょうが、電子機器を利用するのは時代の流れ…。もはや「ピッチクロック」導入は避けられないようで、今後は日本球界にも影響を及ぼすかもしれません。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)